Exp. 359 Maldives Monsoon and Sea Level船上レポート

最終更新日:2015年11月30日
※日付は日本時間

レポートインデックス

レポート10(2015年11月30日)>>Last Core on Deck
レポート9(2015年11月30日)>>最終掘削サイト、年代の推定とホールコアを得るために
レポート8(2015年11月24日)>>残すところあと1週間。様々な想い。
レポート7(2015年11月9日)>>サイトサマリーレポートを担当する!
レポート6(2015年10月29日)>>ドリフト堆積物を調査せよ!
レポート5(2015年10月23日)>>日頃見られない景色
レポート4(2015年10月20日)>>赤道祭 to become a Shellback!
レポート3(2015年10月18日)>>モルディブ到着
レポート2(2015年10月8日)>>航海開始
レポート1(2015年10月6日)>>乗船前

レポート10(2015年11月30日)>>Last Core on Deck

新野薫(山形大学/Radiolarian Micropaleontologist)

山形大学修士2年の新野です。
現在、すべてのサイトの掘削が無事終了しました。掘削中にレポートを書くことができず、すみません。
最後のコアは、日本の時間で11月27日の深夜頃に船上に上がりました。コアが上がってきて“Core on Deck”のアナウンスがあったら、微古生物学研究者と地球化学研究者はキャットウォークに出て、コアの最下部であるコアキャッチャーとコアの中間からの間隙水をそれぞれ採取して分析します。そのため、普段は堆積学研究者などがキャットウォークに出てくることはありません。最後のコアが上がったときも(アナウンスは“Last Core on Deck”でした)、微古生物学研究者と地球化学研究者はいつも通りキャットウォークに出てIODPのテクニシャンからコアキャッチャーと間隙水を受け取ったのですが、このときは堆積学研究者もキャットウォークに出てきて、最後のコアと一緒に写真を撮りました。

2ヶ月間、12時間のシフトで毎日仕事をしていましたが、乗船研究者やIODPのテクニシャンたちが常に何か楽しみを見つけて、研究以外の部分でも面白い航海にしようとしていたため、あっという間に2ヶ月が経ちました。特に、微古生物学ラボのホワイトボードには“Joke of the Day”が書かれていたり、昼シフトと夜シフトの間で伝言を書き合っていたりしたので、見るのが楽しみでした(Photo.2)。

現在、下船に向けてラボや顕微鏡室の私物の撤収や掃除を行っています。二ヶ月間毎日通った研究室がどんどん片付けられていくのでさびしいです。大学のある山形ではすでに初雪が降ったそうで、日本に戻るのが少し憂鬱ですが、まずは帰港地であるスリランカのビールが楽しみです(船上ではアルコールが禁止されています)。航海の初めと最後しかレポートを書くことができませんでしたが、二ヶ月間ありがとうございました。
この航海で、地質学的に意義のあるデータやサンプルを得ることができたので、乗船研究者達は、今後は乗船後研究に注力していきます。

Photo.1 最後のコアキャッチャーサンプル(Photo by J. R. Young)

Photo.2 微古生物学ラボのホワイトボード

レポート9(2015年11月30日)>>最終掘削サイト、年代の推定とホールコアを得るために

井上麻夕里(岡山大学/Inorganic geochemist)

またまた岡山大の井上です。
前回のレポートを書いた直後に、な、な、なんと、もう1サイト行くことになり、少し前に掘削が終わりました。これで本当に最後です。
朝日を見る余裕はなくなりました。でもまあ雨だったのでよしとしましょう。ところで、最後のサイトのレポートはどうしたらいんでしょうね?
コアラボには最後のコアが広がっていて、でも片付けも進んでいて、個人の荷物の整理も行われており、でもまだ最後のサイトの年代の話し合いがされていたり、混沌としていました。

年代は微化石によって船上で決められています。掘削前のミーティングでPaleontologist(nonnofossil)として乗船しているJeremyが、白黒の写真をスライドで示して、これは何年代の写真だと思う?と聞いていました。写真1のような感じの写真でした。つまり、見た目でその当時の年代が大体把握できる、ということです(だと思います)。
例えば日本であれば、タケノコ族の写真を見れば、ああ70~80年代かな、ダブル浅野とかトレンディードラマの頃の写真を見れば、ああ、懐かしの90年代だな、とか分かるように、微化石も時代によって種が変わるので、Paleontologistはそれを的確に判断して年代を出されています。それによって堆積速度も算出されるので、非常に重要な役割です。

一方、Geochemiはいつもwhole-roundの貴重なサンプルを、間隙水を絞るために持って行ってしまうので、嫌われやすいです。コアを広げてみた時に間隙水用のサンプルの場所には堆積物ではなく、スポンジが詰まっているわけです。つまり、連続性がそこで途切れてしまうわけですから、まあ嫌われても仕方ありません。こういう状況なので、間隙水用のwhole-roundのサンプルをもらえるかどうか瀬戸際のコアの時は、陰でピーターから「泣け」という指示がありました。幸いなことに泣くことはなく、円満に掘削を終えることができましたが、女の涙は万国共通なんだな、ということを学んだ航海でした。

写真1:これは1960年代のロンドンのファッションです。Photograph by John French (http://www.vam.ac.uk/)

写真2:顕微鏡を覗いて年代を決めている、秋田大のSantiさん。


写真3:サンプリングの様子。奥にいるのは山形大の新野さん。間隙水(IW)を採取した箇所は、右手前の「PAL」とあるようなスポンジが、コアの真ん中に「IW」として置かれています。

レポート8(2015年11月24日)>>後、1週間。様々な想い。

井上麻夕里(岡山大学/Inorganic geochemist)

こんにちは、岡山大学の井上です。

モルディブでの航海も残すところ後1週間となり、現在は最後のサイトで掘削を行っています。
中國くんは船での食事が食べられなくなるのが寂しい、新野さんはいろいろ慣れてきたところだから、もうちょっといたらもっと楽しめそうかなあ、と、何とも頼もしいことを言っていました。私は、、早く家に帰って酢の物や冷や奴が食べたいです。あ、日本はもう湯豆腐の季節かな?それもいいですねー。

閑話休題、こちらは最後のサイトの掘削を行っており、ここのサイトも含めてほぼ全ての船上でのデータが出そろってきています。間隙水のデータはなかなか面白く、帰って酢の物を食べたいのと同じくらい、できればもう1カ所くらい掘削して、比較できるサイト数を増やしたいくらいです。ですが、それを言い出すときりがありませんので、やはり帰ることとしましょう。(酢の物と掘削を比較してしまいすみません)

これからはpost cruise scienceに向けての話し合いや、shore baseでのサンプルリクエストのリスト作成、Tシャツに今回の航海のロゴをプリントしたり、最後のJRでの食事を楽しんだり、日の出をゆっくり眺めたり、片付けをしたりします。

写真1:ちゃんと働いています!最後のサイトです。こうやってコアが上がるたびに間隙水(IW)のサンプルを受け取りに行きます。

写真1:ちゃんと働いています!最後のサイトです。こうやってコアが上がるたびに間隙水(IW)のサンプルを受け取りに行きます。

写真2:ピーターと。写真1でwhole roundのIW試料をゲットしたら、すぐ1つ下のChem Lab(写真に写っている実験室)に降りて、そのまま中身を取り出しスクイーザーに入れて、写真の機械で圧力をかけて間隙水を絞り出します。その間、本来ならヘルメットも安全ゴーグルも手袋も付けたままです。これはスタッフサイエンティストのカルロスが時間が空いている時に写真を撮りにきてくれて、二人でいつもやっているポーズをとったものです。

写真2:ピーターと。写真1でwhole roundのIW試料をゲットしたら、すぐ1つ下のChem Lab(写真に写っている実験室)に降りて、そのまま中身を取り出しスクイーザーに入れて、写真の機械で圧力をかけて間隙水を絞り出します。その間、本来ならヘルメットも安全ゴーグルも手袋も付けたままです。これはスタッフサイエンティストのカルロスが時間が空いている時に写真を撮りにきてくれて、二人でいつもやっているポーズをとったものです。

今回の航海は炭酸塩プラットフォームでの掘削ですが、1996年にODP Leg 166でGreat Bahama Bankでも同様の炭酸塩の掘削が行われており、今回はその時の乗船研究者が6名乗っています。皆もちろんベテランで、それぞれの分野で有名な研究者です。その中でもPeter Swartは炭酸塩の地球化学分野でも有名なマイアミ大の先生ですが(まさに”Diagenesis”と言う講義名の実験授業もされているとのこと)、当時は主席研究者の一人だったようです。そして今回はGeochemistとしての乗船で、私とピーターは同じナイトシフトでチームとして働いてきました。彼の名前は私が研究を始めた時から論文で知っていますので、最初は緊張していました。そして今もまだ緊張しています。いい人なのですが、そういう問題ではなく、やはり緊張します。ただ彼から学ぶことは多く、いろいろと勉強になっています。

写真3:ピーターに写真2の写真を使ってもいい?と聞いていたら、こんなのもあったよ、と送ってくれた写真です。まだ最初のコアが上がって来る前の遥か昔の写真です。今回は私の写真ばかりで恐縮です。

写真3:ピーターに写真2の写真を使ってもいい?と聞いていたら、こんなのもあったよ、と送ってくれた写真です。まだ最初のコアが上がって来る前の遥か昔の写真です。今回は私の写真ばかりで恐縮です。

では、残り1週間、まだ実験も残っていますので、このまま寝坊しないように、また食べ過ぎないように、気を付けていきたいと思います。

写真4:本日の日の出です。どうぞ癒されて下さい。

写真4:本日の日の出です。どうぞ癒されて下さい。

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レポート7(2015年11月9日)>>サイトサマリーレポートを担当する!

中國正寿(創価大学/Organic Geochemist)

こんにちは。創価大の中國です。船上レポートをお届けします。
船上では、前回のレポートにあったように、船上実験を行います。
それらの結果は、コアの基本的な評価やこれからの研究の方向性を決める基礎的情報として用いられます。
ということで、結果が出たら、まとめなくてはなりません。
頻度は、各サイトごと。
各サイトが終わるごとに結果と考察を期間内にまとめます。
期間は終わって約2日。
このサイトサマリーレポートが結構大変で、夜遅くまで作業する姿をよくよく見かけるようになりました。
サイトサマリーレポートは、Lithostratigraphy、Biostratigraphy、やPhys Propsといった分野ごとに項目はわけられています。それらを統合して、1つのサイトサマリーとしてまとめます。
それぞれの分野で、各サイトをそれぞれ1人ずつ担当するグループもあれば、いずれのサイトもさらなる細かい分野・項目に分け、皆で作成する方向性のグループもあります。
僕はGeochemistなのですが、方向性は“各サイトをそれぞれ1人ずつ”。
それでも、Geochemistは4人のグループなのですが、3人(井上先生を含む)が研究者(学生ではないという意)、内2人がネイティブ・スピーカーということで、僕には、書く機会はこないだろうと、そう踏んでいました。

 写真1 ヘッドスペースサンプル。ガスモニタリングに用いるサンプルです。基本的には、1コアにつき1サンプルあります。
写真1
ヘッドスペースサンプル。ガスモニタリングに用いるサンプルです。基本的には、1コアにつき1サンプルあります。

ところが…
「このサイトは君がサマリーを書くんだ。」
一瞬、聞き間違えだと判断しました。

けれども事実は事実です。サイトサマリーレポートの作成をします!
まだ僕の担当のサイトではないのですが、すぐ危機を察知しました。
僕の芳しくない英語能力とこれまでに経験のない炭酸塩堆積物。
準備をしなくては間に合いません。
まずは、前回のU1465とU1466のサマリーを教科書に勉強です。
Geochemistryと一言に言っても、さらに、Organic(有機)とInorganic(無機)に分けられます。僕の専門は有機化学です。しかし、出てくるデータは無機化学ばかり。これまで無機地球化学は噛ったこともありませんでした。
出てくる、出てくる、よくわからない岩石の名前や無機化学の解釈の数々。

写真2 CHN分析と炭酸カルシウム測定に用いる試料。こちらは各セクションにあるので結構な数の試料数になります。今写っているだけでも、一部です。たくさんあります!

写真2
CHN分析と炭酸カルシウム測定に用いる試料。こちらは各セクションにあるので結構な数の試料数になります。今写っているだけでも、一部です。たくさんあります!

わからないところを教えてもらいながら、データと文章とのにらめっこの日々が続いています。
けれども、そのお陰で、それまで良く分からず出していたデータが、“次はどのようなデータになるのだろう”や“このサイトの傾向に似たデータが得られそうだ”などなど、自分の中で新しい意味を持って動き出した感じがあります。
これは、“有機化学だけ分かればいいや”といった受け身だった時のままでは、感じ得なかった感覚かもしれません。
そういった意味では、すでに大きな収穫です。

僕の担当するサイトまではまだ時間があります。
今のうちに、しっかりと活躍できるよう準備していきます。

写真3 本航海では、堆積物中の間隙水の測定もあります。写真はその試料です。こちらもたくさん試料があり、データ数は結構な数になります。

写真3
本航海では、堆積物中の間隙水の測定もあります。写真はその試料です。こちらもたくさん試料があり、データ数は結構な数になります。

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レポート6(2015年10月29日)>>ドリフト堆積物を調査せよ!

井上麻夕里(岡山大学/Inorganic geochemist)

岡山大学の井上です。

モルジブでの掘削がようやく始まり、最初のサイトが終了しました。
本航海でのキーワードの一つが「ドリフト堆積物」です。ドリフト(drift)とは漂流するという意味を持っていますが、ここでは流れによって運ばれた海底の堆積物のことを指します。
さ らにここで言う流れとは、風によって生じる海流のことです。そして、この風こそがモンスーンによるものであり、ドリフト堆積物を細かく調べることにより、 いつからインドモンスーンが成立し、その後どのような変化を経て、あるいは変化することなく、現在のインドモンスーンシステムが確立されたのかを明らかに していく予定です。
さらに、風による海流の影響はそれほど深いところまでは届きませんから、過去の海水準変動とも関連付けてドリフト堆積物の動きを捉えようとしています。

ま た、サンゴ礁地形のような炭酸塩の堆積物は続成の影響を受けやすいのが特徴ですが、この続成のプロセスはまだよく分かっていません。そこで、堆積物にわず かに含まれる水(間隙水)を採取し、pHやアルカリ度、カルシウムやストロンチウムといった各種元素を測定し、さらに炭酸塩堆積物の方の分析も行うこと で、堆積物内でどういう化学作用が起きているのかを検証することも本航海の目的の一つです。

そして、私の船上での役割は Geochemistですが、まさに船の中で堆積物から間隙水を搾り取り、その水試料の各種分析を行っています。また、搾り取った後の堆積物についても同 様に分析を行っています。堆積物を測定する時には、例えば10mgというように決まった量をまずは秤量しなくてはいけませんが、その際はもちろん天秤を使 います。ですがここは船の上、というか海の上。常に揺れているので、大学の実験室のように安定した秤量というわけにはいきません。そこで、天秤専用のソフ トウェアがあり、200回測定した平均値を自動的に算出するようになっています。なので、一つの秤量に時間がかかります(3分程度?)。そこで、時間がもったいないと思 い他の作業をしながら秤量をしていると、すぐにわけが分からなくなってしまいます。単純作業ですが、それなりの集中力が必要となり、リズムを乱さないよう に集中していると12時間が結構あっという間に過ぎていきます。まあ、まだ最初のサイトだからかもしれませんが。。。

写真1:間隙水を搾り取っているところです。チタン製のスクゥイーザーの中に堆積物が入っており、上から圧力をかけて中の間隙水を絞り出します。

写真1:間隙水を搾り取っているところです。チタン製のスクゥイーザーの中に堆積物が入っており、上から圧力をかけて中の間隙水を絞り出します。

写真2:秤量中の中國くん。後ろに写っているのがCAHNの天秤で、右手がCAHNに繋がっているソフトウェアです。

写 真3:ソフトウェアのアップです。赤いラインが平均値で、200回測定が終わったところで、STOPを押して、Get Massを押して、Assignを押して、そしてSaveを押さなくては、秤量結果がアップデートされません。Saveのし忘れはGeochemiのある あるです。

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 レポート5(2015年10月23日)>>日頃見られない景色

中國正寿(創価大学/Organic Geochemist)

こんにちは。創価大学の中國正寿です。
JOIDES resolutionから船上レポートをお届けします。
現在、船は、モルディブの海上にて掘削を行っている最中です。
10月の頭にオーストラリアのダーウィンからモルディブに向けて出発し、今週の頭から掘削が始まりました。
ダーウィンからモルディブへの移動中には、様々な海の風景をみることができました。
一面見渡しても陸の見えない海一色の景色(画像1)、夜には日本とはまた違った南半球の星々、それに、不思議なほど穏やかな海や(画像2)、海にかかる大きな虹(画像3)などもみることができました。

画像1 360度見渡す限りの海。

画像1 360度見渡す限りの海。日の入り直後はとても綺麗です。

画像2  とても穏やかな海。

画像2  とても穏やかな海。風がなく、雲が海面に鏡のように照らされていました。

画像3 海をかける虹。とても大きな虹で遮るものが何もなく、虹を一望できました。

画像3 海をかける虹。とても大きな虹で遮るものが何もなく、虹を一望できました。

生き物も、トビウオ、クラゲ、鳥、たまにトンボ(おそらく陸が近い時だけ)も見られたりします。
モルディブに来てからはたまにイルカが姿を表わすようになりました。写真を撮れてないのが残念です。それに、サメがいたとかいないとかの話題もあったりなかったり…いづれにしても、日頃見られない景色に感動しています。
掘削が始まってからは、いよいよ仕事がはじまりました。船では、各々、やるべき役割が与えられていています。例えば、Sedimentologistはコアの岩相を見たり、Paleontologistが微化石からコアの年代を見積もったり、僕はGeochemistでコアの化学的組成の把握を行ったりしています。
そして、コアが海底から掘削され上がってきたら、それぞれの役割にわかれて、そのコアが有している科学的情報を様々なアプローチから、船上でのコアの特徴把握を行います。上がってくるコアは、一目見ただけでも、それぞれ特徴があってとてもおもしろいです。白っぽいもの、粘土みたいな時もあれば、石ころだらけだったり、時には貝殻のようなものがたくさん出てくる時もあり、次はどのような顔をした堆積物が上がってくるのかと考えることも、皆で、ひとつの楽しみとしています。
まだまだ掘削は始まったばかり。

これから先、しっかり安全に、新しい発見に向けて船上での作業を頑張っていきます。

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レポート4(2015年10月20日)>>赤道祭

井上麻夕里(岡山大学/Inorganic geochemist)

先日新野さんから報告がありましたが、出港してから13日経ち、ようやくモルジブに到着しました。
そして、出港してからちょうど2週目の昨日、最初のサイトに到着しました。
コアやサンプリング、実験の話はまたルーチンになってきたらお伝えしたいと思いますが、今日は南半球から北半球へと赤道を越えた時のことについてお伝えしたいと思います。

日 本では赤道祭とも呼ばれているのかもしれませんが、Wikipedia(Crossing the Lineで検索)によると、欧米の海軍などで行われている、初めて赤道を越える乗組員に対して行われる儀式とのことです。この伝統は昔は岬を越える時に行 われていたとも言われているようで、初めて赤道を越える乗組員を”愚か者”として扱うことで士気を高めるためであったり、これからの長く険しい航海をうま く乗り越えられるようにするための洗礼であったりしたようです。
既に赤道を越えたことがある者はShellback(Naptuneの子と捉えられている)と呼ばれ、まだ越えたことが無いものはPollywogsとあだ名を付けられます。

私たち日本グループは皆”卑しくて愚かな”Pollywogでした。

このPollywogはShellbacksから数々のいたぶりを受けます。今回のJRでは、赤道を越える前日にあんなことがあり、赤道を越えたらあんなことやこんなことやあんなことまでされてしまいました。とても恥ずかしくて皆さんにお伝えすることはできません。逃げ道もないので耐えざるを得ないのですが、この洗礼に耐えることができたので、晴れて私たちも全員Shellbackとなることができました。
それにしても2週間もトランジットがあったからか、素晴らしく手が込んでいて、この儀式を準備されたShellbacksの皆さんに畏敬の念さえ抱いてしまいました。

詳しいことはお伝えするのを控えたいと思いますが、とにかく全身ベチャベチャにされてしまい、この後遺症(特に異臭)はその後2日くらい続き、やっと正常に戻りつつあるところです。
歴史的にはRobert FitzRoy船長が元々考案したセレモニーらしいのですが、全く何てことを考えついたんでしょうね。

 

【写真1】 お前はなんてよく寝るやつなんだ、と皆の前で断罪され、笑い者にされています。Pollywogは一人づつ何かしら悪いところを指摘され裁判にかけられるのです。私はnot guiltyを主張しましたが通るわけがありませんでした。そもそもこの格好からして制裁の一つです。

【写真2】 あーーーーーー

【写真3】 Neptune達がご観覧されていた場所です。今見ると、兵どもが夢の跡、という気分です。

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レポート3(2015年10月18日)モルディブ到着

新野 薫(山形大学/Radiolarian Micropaleontologist)

山形大学大学院修士2年の新野薫です。微化石研究者としてIODP Exp.359 Maldives Monsoon and Sea Levelに乗船しています。取り扱うのは放散虫という微生物の化石です。船上で主に行うのは、掘削されたコアに含まれる放散虫化石を顕微鏡で観察して、コアの年代を推定することです。

Exp.359は、オーストラリアから出港してモルディブまで向かうため、IODPの他の航海と比べると掘削地点までのトランジットが長いです。そのため、トランジットの間は、今回の掘削サイトに関連するテーマや、研究者たちの興味を惹くようなテーマで乗船研究者による講義が行われました。掘削開始予定の一週間ほど前から、乗船研究者はすでにそれぞれのシフト(12:00-24:00のデイシフトと24:00-12:00のナイトシフト)を開始させています。私はデイシフトを割り当てられ、掘削が開始したときにやるべきことが問題なく行えるように、船上にあるコアを使用して検鏡用スライドを作成したり、作成したスライドを観察したりしています。

船には、生活に必要な最低限の設備だけでなく、シアタールームやジムもあります。船の食事は肉やじゃがいもがメインであることが多い上、食事の時間帯以外でもクッキーやアイスが食べ放題のため、ジムをよく利用しています。休憩時にはデッキに出て海の写真を撮ったり魚を探したりすることができます。微化石研究者のひとりがイルカを見たそうですが、私はまだ見ることができていません。航海が終わる前に一度は見たいです。あわよくば鯨が見たいです。

今朝(10月18日、日本時間では昼頃)モルディブに到着し、もうすぐ最初の掘削サイトに到着する予定です。船の揺れや船上での生活には慣れ、最初のコアが楽しみですが、自分の仕事がしっかりこなせるかどうか少し心配です。

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Research planの発表後にお祝いに食べたアイスとSantiさん

舳先からの日没

舳先からの日没

微化石研究室(船内のラボでは最も景色がいいそうです)

微化石研究室(船内のラボでは最も景色がいいそうです)

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レポート2(2015年10月8日) 航海開始

Santi Dwi Pratiwi (Akita University/Nannofossil Paleontologist)

Darwin is famous with Crocodiles and Japan team has opportunity to visit Crocodylus Park – research and education center in the last free day before vessel departure (Figure 1). Also we had short time to visit Museum and Art Gallery of the Northern Territory. We spend 4 days on the ship at Fort Hill Wharf port with the beautiful view and nice place at night (Figure 2). 私はサンテイ デウィ プラテイウィです。秋田大学のインドネシア人留学生で、博士後期課程の二年生です。この航海での私の仕事は、それぞれの掘削サイトにおける、ナノ化石に基づいた生層序を作成することです。 今回のExp. 359が初めてのIODP研究航海への参加で、夜シフト(00時から12時まで)仕事をしています。

Figure1. The last free day before vessel departure-Japan team at Crocodylus Park and Zoo (photo credit by Santi)

Figure1. The last free day before vessel departure-Japan team at Crocodylus Park and Zoo (photo credit by Santi)

Figure2. First night view at Darwin Port Terminal (photo credit by Santi)

Figure2. First night view at Darwin Port Terminal (photo credit by Santi)

30 scientists jointed in this amazing expedition and have a good opportunity for young scientist to study. We have free lectures from famous scientist in the world related with this target of expedition (Figure 3). I am working with other two nannofossil paleontologist in this expedition (Figure 4) and now just finished our work on the methods sections of the expedition reports. During the first week of the expedition, we have to be familiarized with the ship’s laboratories, core flow, sampling, core curation, and publication obligations and procedures used on the ship before arriving to the first site. Microscope laboratory and the outside deck are my favorite places for talking, refreshing, enjoying our sweet cake during sunset time and discussing with other scientist (Figure 5).

Figure3. Science party IODP Exp. 359 (photo credit by scientist)

Figure3. Science party IODP Exp. 359 (photo credit by scientist)

Figure4. Nannofossil paleontologist team: Xiang Su, DR. Jeremy Young and I (photo credit by DR. Jeremy Young)

Figure4. Nannofossil paleontologist team: Xiang Su, DR. Jeremy Young and I (photo credit by DR. Jeremy Young)

Figure5. The first sunset at JOIDES Resolution cruise IODP 359 (photo credit by Santi)

Figure5. The first sunset at JOIDES Resolution cruise IODP 359 (photo credit by Santi)

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レポート1(2015年10月6日)乗船前 

 

井上麻夕里(岡山大学/Inorganic geochemist)

岡山大学の井上です。

IODP Exp. 359 Maldives monsoon and sea levelに乗船しています。日本からは、秋田大学のSanti Dwi Pratiwiさん、山形大学の新野薫さん、創価大学の中國正寿さんが乗船しています。みんな元気です。
この航海は、オーストラリアはダーウィンでの4日もの長いport callを経て、ようやく今日(5日)のお昼に出港しました。が、まだまだこれから目的のモルディブまで2週間もかけて移動しなくてはいけ
ません。
ん?ということは、サイトに着いてからは1ヶ月と少ししか残されておらず、しかも浅い海域ですからコアはどんどん上がってくるようで、この先どんな戦場と化すのか楽しみです。嘘です。不安です。

出港前。初めてのJRでの夜です。

出航後。出港前と同じポーズで撮ってみました。少しずれていますが、後ろに見れるのがダーウィンの街です。

その不安を払拭するために、ダーウィンでの最後の日は動物園に行き、ワニやライオンに癒されてきました。 さらに最後のビールも飲んできましたが、今回の発見はLazy Yakというビールが美味しかったことです。港に近いバーでは日曜日がLazy Yakが安くなることをチェックしていましたので、ちゃんとそこで最後のLazy Yakを楽しんできました。ああ、こう書いていると飲みたくなってきてしまいます…

ワニ。名前を忘れてしまいました。この後、ワニ肉を食べました。

ワニ。名前を忘れてしまいました。この後、ワニ肉を食べました。

ライオン。暑さのせいで結構な動物がだらけていましたが、さすが百獣の王だけ あって、一番堂々とだらけていました。

ライオン。暑さのせいで結構な動物がだらけていましたが、さすが百獣の王だけあって、一番堂々とだらけていました。

船では、これからまだ時間がありますので、毎日各分野の教授からレクチャーが行われる予定です。また、参加者全員からのプレゼンテーションも予定されていますので、今はその準備やメソッドを執筆しているところです。

ということで、サイトに着くまではあまりエキサイティングな報告もできないかもしれませんが、我々4人で随時更新していければ、と思っています。

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カテゴリー: IODP Expedition パーマリンク

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