Exp. 390/393 South Atlantic Transect

船上レポート

最終更新日:2022年08月23日
※日付は日本時間

IODP 第393次航海

レポート18(2022年 8月8日受領)>> IODP 第393次航海 終わりは始まり
レポート17(2022年 8月5日受領)>> IODP 第393次航海 IODPへのステップアップ 〜実際に航海に参加してみて〜
レポート16(2022年 8月3日受領)>> IODP 第393次航海 掘削終了!! ケープタウンに向けた最後のトランジット
レポート15(2022年 8月1受領)>> IODP 第393次航海 Happy Birthday, Apple Pie Monster
レポート14(2022年 7月28受領)>> IODP 第393次航海 バーチャルミニラボツアー第2段
レポート13(2022年 7月27受領)>> IODP 第393次航海 バーチャルミニラボツアー第1段
レポート12(2022年 7月25受領)>> IODP 第393次航海 夜間シフトの仕事と生活
レポート11(2022年 7月21受領)>> IODP 第393次航海 船上でのBBQ
レポート10(2022年 7月20受領)>> IODP 第393次航海 研究者を支える名脇役たち
特別レポート(2022年 7月19日受領)>> IODP 第393次航海 特別レポート:Dick Kroon教授を追悼して
レポート9(2022年 7月15日受領)>> IODP 第393次航海 JOIDES Resolution号の階段
レポート8(2022年 7月11日受領)>> IODP 第393次航海 JOIDES Resolution号での生活:娯楽編
レポート7(2022年 7月06日受領)>> IODP 第393次航海 JOIDES Resolution号での生活:食事編
レポート6(2022年 6月30日受領)>> IODP 第393次航海 JOIDES Resolution号での生活:居住区編
レポート5(2022年 6月26日受領)>> IODP 第393次航海 微古生物学者のお仕事
レポート4(2022年 6月23日受領)>> IODP 第393次航海 ついに最初のコアを採取!
レポート3(2022年 6月19日受領)>> IODP 第393次航海 約1週間のトランジットを経て
レポート2(2022年 6月12日受領)>> IODP 第393次航海 揺れる船内
レポート1(2022年 6月10日受領)>> IODP 第393次航海 ついにJOIDES Resolution号に乗船!

IODP 第390次航海
レポート1(2022年 4月16日受領)>> IODP 第390次航海 乗船前~出航前の様子

 

Exp. 393の航海レポート18:終わりは始まり

桑野 太輔(千葉大学 大学院生)
土井 信寛(千葉大学 大学院生)

みなさん、こんにちは。千葉大学D3の桑野太輔です。
JOIDES Resolution号はついにケープタウンに到着し、IODP Exp. 393は無事に幕を閉じました。

 

写真1 乗船研究者の皆さんでの集合写真。Erick Bravo氏(IODP/JRSO)撮影。

長いようで短かった2ヶ月間。本当にあっという間の航海でした。私にとっては初めての海外での研究活動で、英語もままならない中での研究活動でしたが、石灰質ナノ化石の年代決定という私たちにしかできない仕事をやりきることができ、嬉しく思います。

 

写真2 Micropaleontologist teamでの集合写真。2人の研究者の方が陸上分析者として参加してくださりました。Erick Bravo氏(IODP/JRSO)撮影。

航海の最後ということで、土井さんからも感想をいただきました!

~~~~~  「航海の最後に当たって」by 土井 信寛 ~~~~~
実はこのような研究船に乗ったのはジョイデスレゾリューション号が初めてで、さらに海外渡航も今回が初でした。自分の拙い英語などで他の研究者の方たちとコミュニケーションがうまくできるのだろうか、研究作業でしっかり貢献できるのだろうかと最初は不安だらけでした。実際、他の方に協力して頂いたことはたくさんありましたし、桑野さんにも大変お世話になりました。しかし、様々な作業に従事して多くのことを学べたとともに、もっとできるようになりたいと感じたことも多々あり、この経験がとても良いものだったと胸を張って言うことができます。最後に、夜間シフトに従事していた者として日の出とともに現れたケープタウンの写真と、海から見た雄大なテーブルマウンテンの写真を添えたいと思います。

 

写真3 日の光に映し出されたケープタウンの山々

写真4 ついにケープタウンへ戻ってまいりました。(航海最終日に撮影)

~~~~~ 「航海の最後に当たって」 ココマデ ~~~~~

 

さて、今回の航海では計4つのサイトで掘削を無事に完了し、以前の航海のExp. 390C、395E、390と合わせて、計7つのサイトの堆積物と基盤岩を採取することができました。ただ、航海の終わりは本当の意味でのスタートラインです。帰りのトランジットの間には、今後の研究に向けて、たくさんのミーティングが企画され、多くの共同研究の計画も立てられました。下船後、私たちは再度サンプルリクエストを提出し、基盤岩は今年の11月に、堆積物は来年の1月にサンプリングパーティが行われます。いよいよ、大西洋横断のコア試料を使用した研究が始まろうとしているのです。

船上レポートもこれが最終回となりました。最終回を含め、計18回に渡って船内の様子をお届けしてきましたが、いかがでしたでしょうか。少しでも多くの方にIODP航海について、JOIDES Resolution号での研究活動について知っていただけたら幸いです。

 

写真5 最後の晩餐でのアップルパイを持つ筆者。Martin Latas氏撮影。

最後に、IODP Exp. 393に同乗した研究者、スタッフの方々、渡航や準備を支援してくださったJ-DESCを始めとした関係者の皆様に改めて感謝申し上げます。様々な御支援、ご協力を賜り、本当にありがとうございました。
この航海の研究活動についてもどこかで発信する機会があればと思っていますので、今後の活動もお楽しみに!!

 

 

Exp. 393の航海レポート17:IODPへのステップアップ 〜実際に航海に参加してみて〜

桑野 太輔(千葉大学 大学院生)

みなさん、こんにちは。千葉大学D3の桑野太輔です。トランジットも終盤で、JOIDES Resolution号(以下JR号)は、まもなくケープタウンに到着しようとしています。研究者の方々はレポートをほぼ書き終えて、下船の準備が着実に進められています。さて、今回の船内レポートでは、実際にIODPに参加してみて、これまでに参加したJ-DESCのコアスクール*やSCORE航海*での経験がどのように役に立ったのかを簡単にお伝えできればと思います。

 

写真1 今回の航海で顕微鏡を観察する筆者

私は学部4年生の頃から、J-DESCのさまざまなコアスクールに参加し、これまでに、コア基礎解析、安定同位体、古地磁気、ロギング、炭酸塩、微化石とほぼすべてのコースに参加してきました。さらに、昨年度にはSCOREの航海で「ちきゅう」に乗船させていただき、10日間ではありますが、微古生物学者として石灰質ナノ化石での年代決定を行いました。実際にこれらの経験があったからこそ、今回の航海ではかなりスムーズに船内作業を進めることができたのではないかと感じます。

 

写真2 持参したJ-DESCコアスクールのテキスト

私の場合、今回のIODPへの参加が初めての海外での研究活動だったため、英語でのコミュニケーションが大きな障壁の1つでした。しかし、その中でも研究活動を十分に行うことができたのは、予備知識が十分にあったことが大きな要因です。J-DESCのコアスクールでは、講義によるレクチャーだけでなく、本物のコア試料を用いて実際に解析を自らの手で行います。コアスクールに参加しているときは実感が湧きませんでしたが、IODPに実際に参加して、これまでの経験が、実際に船上で行われている作業そのものであることを強く感じました。逆に、それぞれの場所でどのようなことが行われているかを理解していることは、船上で研究活動を行う上で大きなアドバンテージであると感じました。
それに加えて、「ちきゅう」によるSCOREの航海に参加したことで、実際にどのようなフローでコア試料が取り扱われるかを体験していたため、自分がどのタイミングでどんな仕事をしなければならないかを容易にイメージすることができました。IODPでは、大学院生であっても一人前の研究者として参加し、その役割を全うしなければなりません。周りの研究者も忙しく自分の仕事をしているため、1から10までを教えてもらえるとは限らない中で、そのフローを理解しているということはかなり重要なことだと感じました。

 

写真3 コアキャッチャーの試料を運ぶ筆者

今回、IODPに実際に参加して一番感じたことは、J-DESCのコアスク−ル、SCOREの航海への参加が大きなステップアップになったということです。現在は、新型コロナウイルス感染症の影響でコアスクールもなかなか開催されていない中かと思いますが、研究航海に参加したいと思っている学生の皆さんは、是非J-DESCのコアスクールに参加してみてください。自分が普段行っている研究分野でなくても、これらのコアスクールに参加することは将来絶対に自分にプラスになって戻ってきます。そして、それらに参加したことがある方は、SCORE航海に参加すると、そこまでの知識を実践に活かすことができると思います。さらに、10日間の航海に参加した後に、IODPに参加すると、これまでの経験が生きてくることを実感できると思います。初めてのIODPは不安や緊張でいっぱいでしたが、これまでの経験のおかげで乗り切ることができそうです(まだ航海は終わっていませんが…)。これまでにコアスクールやSCOREに参加する機会をいただき、J-DESC事務局をはじめとする多くの方々にお世話になりましたことをここで改めて御礼申し上げます。

今回は、学生のみなさんにいち早くこの思いを共有できればと思い、今回は船内レポートではありますが、このような記事を書かせていただきました。詳しいお話は下船後にまたどこかの機会でお伝えできればと思います。下船まで残すところあと1日です。最後の最後までこの航海を満喫できたらと思います。

J-DESCコアスクール: コア試料の分析に必要なスキルを学ぶスクール。基礎的なスキルを習得するコースから、より応用的・専門的なスキルを習得するコースまで様々なコースがある。

SCORE(Chikyu Shallow Core Program: 「ちきゅう」を用いた表層科学掘削プログラム): J-DESCとJAMSTECの協働プログラム。「ちきゅう」がIODP以外の航海に出る機会を活用して短期間の航海を実施。学生を対象とした教育乗船枠もある。

 

Exp. 393の航海レポート16:掘削終了!! ケープタウンに向けた最後のトランジット

桑野 太輔(千葉大学 大学院生)

みなさん、こんにちは。千葉大学D3の桑野太輔です。JOIDES Resolution号(以下JR号)は、最後の地点での掘削を終え、ケープタウンに向けてトランジット中です。いよいよこの航海も残すところあと1週間弱となってしまいました。現在、研究者の皆さんはレポートの執筆に追われており、毎日が締め切りの日々です。

 

写真1 本航海での掘削の終了を示すEOX(End of Expedition)が書かれたホワイトボード

さて、今回の船内レポートでは、これまでのレポートでは書いてこなかったちょっとした出来事たちを紹介したいと思います。

最初の方の船内レポートでも紹介しましたが、今回の航海は新型コロナウイルス感染症の影響で2度ほどテクニシャンの皆さんだけで堆積物の掘削が行われており、その際に掘削したホールをケーシングする作業が行われていました。このおかげで、今回の掘削でそのホールを使って基盤岩を掘削することができたのですが、その際、ドリルパイプを再度、そのホールに入れなければなりません。そのために使用されるのがリエントリーコーンです。下の写真にあるリエントリーコーンを設置することで、ドリルパイプを再突入しやすくさせています。実際に下の写真にある画面は水深約4000 mを写しており、これに海面上の揺れている船からパイプをコントロールするわけですから、かなりの神業です。実際にリエントリーのシーンを見ているとあっという間に、ドリルパイプがコーンの中に吸い込まれていき、JR号の技術力の高さを感じました。

 

写真2 ドリルパイプを再突入させるシーン。カメラを下ろして、それによる映像を見ながらパイプをコントロールする。

また、船の上ならではの出来事として、”Time Change”があります。これは、今回の航海では、ケープタウンを出発してから東に移動しているため、ケープタウンの時間からは時差が生じます。そこで、2時間の時差に対して、2回にわたって1時間ずつ、時間を戻したり進めたりすることで時間の調整を行っています。これは行きと帰りのトランジット中に行われました。最近では、時間を1時間進めた(13:00を14:00にする)のですが、勤務時間が1時間短くなる一方で、反対のシフトの方は1時間オフシフトが短くなるので、休みの時間が減ってしまいます。そのため、Time changeは同じ時間ではなく、別の時間(今回の場合は13:00と1:00)に1回ずつ行われることで、平等に勤務時間とオフシフトが1時間ずつ短くなるわけです。

 

写真3 Time Changeの告知。最近だと8/1と8/3に1時間ずつ時間を進め、ケープタウンの時間に合わせました。

さらに、船内では非常時に備えて約1週間に1回ほどのペースで避難訓練が行われます。避難訓練の際は、実際にライフジャケット、ヘルメット等を着用し、自身が割り当てられている救命艇の場所に避難します。また、1度だけ救命艇の中に実際に入る体験もしました。JR号の救命艇は4台設置されていますが、片側だけですべての人が乗れるような構造になっています。また、船内には救命いかだなどもあり、あらゆる非常時の対策がなされています。

 

写真4 避難訓練の様子。

いよいよ航海もラストスパートになりました。日本を出発してから2ヶ月以上経過していますが、あっという間の日々で終了する実感が湧きませんが、最後まで頑張りたいと思います。では、また次回のレポートもお楽しみに。

 

Exp. 393の航海レポート15:Happy Birthday, Apple Pie Monster

土井 信寛(千葉大学 大学院生)

皆さん、こんにちは。後期博士課程2年生の土井です。本日は短い投稿となりますが、船で行われるビッグイベントの一つ、誕生日パーティーについて触れたいと思います。船の上では毎日代わり映えのない日が続きやすいので色々とイベントが企画されます。その中でも特別なのが誕生日パーティーです。ジョイデス・レゾリューション号では乗っている研究者の誕生日が把握されていて、その誕生日パーティーが行われることになっています。誕生日を迎える人には内緒で前日から他の研究者によってバースデーカードが書かれ、飾りつけの準備を行うこともあります。さて、何故私が航海の最後が近づいている時期にこの記事を書いたのかというと、実はつい先日、もう一人の日本人乗船者である桑野さんが誕生日を迎えられたので、パーティーが開かれたからです。今回はその様子を写真と共にお伝えしようと思います。

パーティーは大体いつも夜間、昼間シフトの交代時間に当たる12時ごろに行われます。会場にはいつもミーティングで使っている会議室を使いますがこのような日にはパーティー仕様にしっかり皆で飾り付けがされます。今回もその時間に桑野さんは会場によび出されました。
会場に入ると皆からハッピーバースデーソングを歌ってもらい、お祝いの言葉を貰っていました。

 

写真1 HAPPY☆BIRTHDAYと書かれた飾りを持つ桑野さん

ちなみに誕生日パーティーの際にはいつも食堂の人たちがバースデーケーキを作ってくれます。桑野さんは良く食べる人として皆さんに知られているためか、今回は2個の巨大なケーキを用意してくれました。その内の一つは実はケーキではなく巨大なアップルパイです。

 

写真2 巨大なアップルパイを持って喜ぶ桑野さん

桑野さんは航海中に食堂で食べたこのアップルパイがとても気に入ったようで、用意されていた日にはほぼ必ず食べていました。私が見ただけでも恐らく10回以上は食べていたように思います。そのため、普段から何人かの研究者たちから“アップルパイモンスター”という名で呼ばれています。この日はそんなアップルパイモンスターな彼のために、誕生日にアップルパイを焼いてほしいという研究者たちの願いを食堂のスタッフさんたちが叶えてくれたのです。そんなアップルパイを見て桑野さんもとても喜んでいました。

もちろん本人だけでケーキを食べるわけではなく(桑野さんなら一人で食べつくせるかもしれませんが)、集まってくれた人たちにケーキを分けて皆で楽しく食べます。普通、ケーキを切り分ける役目は渡された本人が行うことが多いのですが、桑野さんは一目散に自分で大きく切り分けたアップルパイをほおばっていたので、他の研究者の方が代わりにやってくれました。

 

写真3 ケーキに入刀する桑野さん

 

写真4 残りは他の研究者の方が切り分けてくれました。

また、プレゼントはケーキだけではありません。前日までに皆で書いたバースデーカードをケーキの後に渡します。私もこの航海中誕生日を迎えた研究者の方にむけて英語で寄せ書きをしてきましたが、今回は日本語でお祝いの言葉を書いております。このバースデーカードにはジョイデス・レゾリューション号がきれいに映った写真がついてくることになっていて、これには私もうらやましく思います。

 

写真5 バースデーカードを受け取る桑野さん

というわけで今回はいつもとは異なる特殊なイベントをご紹介しました。今回のパーティーは研究者の方以外にもテクニシャンの人たちも参加していてかなり賑やかなものでしたので、1か月半以上の航海中に桑野さんが周りの人から好かれるようになったことがよくわかります。

 

写真6 今回のパーティーには本当に多くの方が集まりました。

航海は残すところ後一週間程度になり、私も日本に帰るのが楽しみになってまいりましたが、同時にもう終わってしまうのかという感傷もあります。航海最終盤のレポートも楽しみにお待ちください。

 

Exp. 393の航海レポート14:バーチャルミニラボツアー第2段

桑野 太輔(千葉大学 大学院生)

みなさん、こんにちは。千葉大学D3の桑野太輔です。今回の船内レポートでは、前回に引き続き、バーチャルミニラボツアー第2段と題して、Fo’c’sle Deckのラボ(前回紹介したフロアの1階下のフロア)を紹介します。

 

写真1 Fo’c’sle Deckの場所 7層構造の上から3段目で、このフロアにコアが上がってきます。

このフロアには、前の航海で乗船されていた相澤さんと高田さんが働いていた、地球化学・微生物学のラボがあります。

 

写真2 地球化学分析のラボ。さまざまな分析機器が並んでいる。

まず、初めに紹介するのが地球化学分析のラボエリアです。今回の航海では、Organic GeochemistとInorganic Geochemistの方が合わせて5名乗船しており(一部兼任),主に間隙水の地球化学分析,岩石試料のXRF分析などを行っています。以前の船内レポートでも紹介していますが、今回の航海は、堆積物と基盤岩をどちらも掘削するため、それぞれが協力をしてどちらの作業も行っています。ですので、普段は岩石学が専門の方も間隙水の抽出等を行っていました。

 

写真3 船内にある天秤。通常とは異なり2台の天秤を使用する。

また、このラボでは少し面白い機器を見ることができます。上の写真はいたって普通の天秤ですが、2台並んでいることがわかります。JR号はいくら大きな船といえども、それなりに船内の研究室も揺れに見舞われます。そこで、できるだけ正確な質量を測定するために、左側の天秤ではすでに質量がわかっている分銅を測定し、それに基づきコンピュータで揺れを補正することで、右側に置いた未知試料の質量を測定しています。こうした船ならでは工夫がみられるのも、JR号の面白いところです。

 

写真4 間隙水を搾り出すスクイーザー

上の写真は、スクイーザーと呼ばれており、この中に堆積物を入れて、圧力をかけることで、堆積物中に含まれている間隙水を搾り出します。IODP航海では、間隙水の分析がルーティンワークとして行われているため、Inorganic Geochemistの方は、堆積物コアが上がってくるたびに、カッティングエリアに足を運び、間隙水を搾り出すためのサンプルを採取していました。

 

写真5 微生物学のラボエリア

最後に紹介するのが微生物学のラボエリアです。今回の航海ではMicrobiologistの方が合わせて3名乗船しており(一部は兼任),コア採取後すぐの微生物試料のサンプリングやコア中の酸素濃度の測定,顕微鏡でのセルカウントなどが行われていました。微生物学の進展は,今回の航海の主目的の1つであり,50年ぶりに掘削が行われる南大西洋海域では初めて分析が行われます。Microbiologistの皆さんは、船内でのサンプリングや処理、分析等に大忙しで、常に大変そうにしていました。また、微生物学のラボの端には、冷蔵庫並みに温度が低いcold roomと呼ばれ、そこで微生物のサンプルを取り扱っているそうです。

 

写真6 得られた基盤岩の処理を行う微生物学者

今回の船内レポートでは、前回紹介しきれなかったFo’c’sle Deckにあるラボの紹介を行いました。これで概ねJR号の施設は知ってもらえたかと思います。ぜひIODPでJR号にのられる方は参考にしてみてください。それでは次回もお楽しみに。

 

Exp. 393の航海レポート13:バーチャルミニラボツアー第1段

桑野 太輔(千葉大学 大学院生)

みなさん、こんにちは。千葉大学D3の桑野太輔です。航海もいよいよ最終盤に差し掛かり、最後のサイト(U1560)での基盤岩の掘削が終了し、ロギングおよび堆積物の掘削を残すのみとなりました。さて、これまでの船内レポートでは、居住区などの船内空間はお届けしてきましたが、ラボの紹介をしていなかったので、今回の船内レポートでは、バーチャルミニラボツアー第1段と題して、私たちが働くコアデッキのラボを紹介します。今後IODPに参加してみたいと言う方は、それぞれの役割の研究者がどんなラボで仕事をしているかといった点について、参考にしていただけると良いかもしれません。

 

写真1 コアデッキの場所 7層構造の上から2段目で、このフロアにコアが上がってきます。

 

写真2 Physical Propertiesの測定エリア

まず、コアデッキに上がってきたコア試料は、上の写真にあるエリアで物性等の測定が行われます。本航海では、Physical Properties Specialistが4名乗船しており、常に誰かが測定を絶えず行っています。

 

写真3 堆積物コアの半割

 

写真4 基盤岩コアの半割

その後、上の写真にある機械を使用してコアの半割が行われます。JR号のTwitterには、堆積物のコアを半割する貴重な映像が掲載されていますので、興味がある方はそちらもご覧ください。岩石試料の場合は、巨大なカッターを使用して半割されます。

 

写真5 主にコアの記載が行われるラボエリア

半割後のコアは、上の写真にあるコアラボに運ばれ,堆積物はSedimentologistが、基盤岩はPetrologistがコアの実物を見ながら記載を行います。また、彼らは堆積物の場合はスミアスライド、基盤岩の場合は薄片を作成し、顕微鏡による詳細な観察を行うことで、岩相ユニットの決定等を行っていました。今回の航海では、堆積物も基盤岩も掘削するということで、Sedimentologistが3名、Petrologistが5名乗船していました。また、Paleomagnetistは、主にパススルー磁力計と呼ばれる機械を用いて、堆積物・基盤岩の古地磁気に関する測定を行います。Paleomagnetistは2名でこれらの仕事を行っていますが、堆積物と基盤岩のどちらも分析を行うため、絶えず忙しく作業をしていました。

 

写真6 微化石処理用の実験室と顕微鏡室

最後にこちらが、我々がお仕事をしている微化石処理用の実験室と顕微鏡室です。左側のラボでは、Micropaleontologistが、得られたコアキャッチャーから微化石を抽出する処理を行います。その後、右側のラボで顕微鏡を用いて微化石を観察し、年代の決定を行います。詳しくは、船上レポート第5回に微古生物学者のお仕事を紹介させていただいていますので、そちらをご参照ください。顕微鏡室は、Micropaleontologistだけでなく、SedimentologistやPetrologistの方も作業を行っていたため、さまざまな分野の研究者の方と仲良くなることができました。

 

写真7 サンプリングプランを話し合う研究者の皆さん

また、上の写真は、船上分析のためのサンプリングのプランを話し合っている研究者の皆さんです。半割されたコアのうち、片方(ワーキングハーフ)は、分析等を行うための試料として使用することができます。それぞれの分野の研究者は、船上での分析を行うために必要な試料の部分にフラッグを立てます。その後、シフトの交換の時間にクロスオーバーミーティングが開かれ、引き継ぎなどが行われるとともに、試料のサンプリングについての話し合いが行われます。ただし、ここでサンプリングを行うのは、船上での分析が必要なものだけで、個人の研究で使用したい試料はのちのサンプリングパーティで採取することになるそうです。

今回の船内レポートでは、JR号のコアデッキのラボについて紹介しました。次回の船内レポートでは、前の航海で乗船されていた相澤さんと高田さんが働いていた、地球化学・微生物学のラボについて、紹介したいと思います。それでは次回もお楽しみに。

 

Exp. 393の航海レポート12:夜間シフトの仕事と生活

土井 信寛(千葉大学 大学院生)

皆さん、こんにちは。後期博士課程2年生の土井です。前回の第三回の投稿から久しぶりの投稿になります。船の生活については既にもう一人の日本人乗船者の桑野さんが大方書いてしまっていますが、私と彼とで大きく違う点が一つあります。それは生活時間帯が正反対なことです。以前にも触れましたが、ジョイデス・レゾリューション号は休むことなく作業を続けるため乗組員の生活時間帯をずらしています。現地時間で私は0時から12時までの夜間シフトで働き、桑野さんは12時から24時までの昼間シフトで働いています。本日は私にしか書けない夜間シフトのお話をしたいと思います。
私は大体いつも仕事の開始1時間前に起きて準備をして作業スペースに向かっています。シフト開始時間の深夜0時前後では食堂で夜食が用意されている時間で、これが私の朝ごはんになります。最近は昼シフトを終えた桑野さんや他の研究者の方たちと話などを交えつつ食事を済ませることが多いです。食事を終えて仕事の引継ぎを済ませると、その後の仕事は昼の方とは変わりません。研究者である私たちは基本的に室内で作業をしているので、作業環境が朝と夜とで大きく変わることがないからです。ただ、室外もそれは同じで、夜になると所々が大きなライトで照らされるようになり、昼と変わらずに掘削を続けています。

 

写真1

 

写真2

写真1,2:船内のいたるところで明かりが灯されて眩しく感じることもあります

 

このように作業の中身自体は昼と夜とでは全く変わりません。深夜に目当ての堆積物の掘削が終わったら、皆で手分けして分析作業に取り掛かるという流れがずっと続きます。

 

写真3

写真3:深夜に上がってきた堆積物を待つ科学者やテクニシャンの方々

 

ただ、昼の頃に比べてさすがに深夜0時から朝の6時ぐらいまでは若干人手は少なく、私もこの時間帯は基本的に研究室を貸し切り状態で作業をしています。また、ちょうどこの時間、外は寒く(南大西洋では季節としては秋から冬ごろに当たります)船の周囲は真っ暗で、特になにもないと一番静かでつまらない時間帯とも言えます。

 

写真4

写真4:海は暗すぎて全く見えません。完全に闇の世界です。

 

6時になると朝食(私にとっては昼食)がふるまわれるので仕事がひと段落したら食堂へ向かいます。食堂では他の研究者の方々と一緒に食べることが多いですが、忙しい時はさっと済ましてしまうこともあります。特に掘削作業が進められている時だと、私の仕事は掘り終わった直後に試料を採取する必要があるので、できるだけいつでも動けるようにしておかなくてはなりません。
ただ、我々夜間シフトの人間にしか体験できないこともあります。例えば、夜空に浮かぶ星を眺めること。こちらの現在の季節ですと曇りがちな日が多いのであまり機会はありませんが、快晴の時の夜にはオリオン座などがきれいに見えるので他の科学者の人たちも星座早見表を手に眺めていることがあります。

 

写真5

写真5:朝日がさす直前の星座を眺めている方々、写真中央で光るのは月です

 

もう一つは毎日起こる日の出の観察で、こちらでは朝8時頃になると空が白み始めます。私のような夜間シフトで働く人にとっては一番楽しみな時間で、日の出の瞬間を見ることが半ば日課となっており、結構な数の人たちが屋外にやって来ます。

 

写真6

写真6:日の出を見に来た方々

 

私も休憩を兼ねて大体毎日その瞬間を写真に収めているのでスマートフォンのフォルダの数がどんどん増えています。私たちが現在いるのは南大西洋のほぼ真ん中なので周りを見渡しても陸地などは見えませんので、あるのは海と雲と太陽だけです。しかし、日によって雲の形、天気、日の出の位置が変わるだけで全く見え方が変わり、遮るものが何もないのもあって様々な雄大な景色を見ることができています。

 

写真7

 

写真8

 

写真9

写真7, 8, 9:海と雲と太陽だけの景色ですが毎日違った見え方になるので
飽きることはありません

 

こうして日の出を迎え朝になると、次第に屋外の電気は消えていきますが、変わることなく作業は続いていきます。ただ、やはり周りが暗い時よりも、心なしか安心して仕事ができるような気もします。

 

写真10

写真10:朝を迎えるジョイデス・レゾリューション号

 

また、この時間になると船内外で人の気配が多くなり始め、研究スペースにも活気が見えるようになります。大体その後は忙しく作業をしていると、あっという間に時間が過ぎていき、気づいたら昼の12時頃になっていてもう片方のシフトの人たちと一緒に昼食にいっています。
最後に、仕事が終わった後の生活について触れたいと思います。とは言っても、余暇の時間の過ごし方はあまり昼からのシフトの方と変わりません。運動をしに行ったり、映画を見たりと人によって様々で、詳しくは第8回目のレポートで桑野先輩が書いてくださっています。ただ、一つ私が注意していることとして、長い間起きていないことが挙げられます。仕事が終わったときにはちょうど空高くに太陽が昇っている時間で、船内も至る所が明るいのですが、私たち夜間シフトの人々は夜の暗さを無視しながら起きて作業をしているので、ずっと朝から昼間に近い状態が続いているようなものです。その対策として、私は部屋を暗くして夜に近い環境を自分で作り、なるべく早く就寝するようにしています。つまり、普通の生活サイクルを守っていくことを重視しているわけです。船の上での生活なので体調はなるべく万全に整えないと、とても作業することはできません。そういった点で考えると、太陽が昇っているときに多く活動できる昼からのシフトの方々がうらやましくもあります。

皆さん、如何でしたでしょうか。私たちの船上生活も残る所2週間程度になりました。6月の初旬から乗っていたのに本当にあっという間に時間が過ぎていったことを痛感しています。このレポートも後数回となりますが、次回もお楽しみにお待ちください。

 

Exp. 393の航海レポート11:船上でのBBQ

桑野 太輔(千葉大学 大学院生)

みなさん、こんにちは。千葉大学D3の桑野太輔です。JOIDES Resolution号(以下JR号)は、最後の地点での掘削が順調に進んでおります。さて、今回の船上レポートでは、先日行われた船上でのBBQについて紹介したいと思います。

 

写真1 屋外にあるBBQコンロ

JR号のデッキには、BBQ用コンロが常備されており、天気の良い日曜日にはBBQが行われます。残念ながら、私たちの航海の間は天気がよくなかったり、波が高かったりと日曜日が良いコンディションに見舞われなかったのでこれまで開催されていませんでしたが、ついに先週の日曜日にBBQが行われました。JR号のBBQでは、日本で行う際と同じように炭が使用され、ソーセージやハンバーガー、さらにいろいろな種類の肉が振る舞われました。味付けも日本人好みのBBQソースの味で、非常に美味しかったです。

 

写真2 私が選んだホットドッグ、ポーク、ビーフステーキ(もちろんおかわりもしました)

 

写真3 屋外でBBQを楽しむ研究者のみなさん

私たちは、後半戦に入りレポート書きや分析と毎日忙しい日々を過ごしていますが、このときにデッキにある机をみんなで囲んで、ひとときの楽しい時間を過ごしました。また、海を見ながらのBBQは筆者にとって初めての経験でしたので、とても楽しかったです。

 

写真4 BBQ時のデッキを撮影したパノラマ写真

さらに、私たちはBBQがあることを事前に教えていただいていたので、日本からコンロでも焼ける食べ物として餅を持ってきました。餅は、海外の方にはあまり馴染みがないので、興味がある方々が食べにきてくださりました。実際に食べてくださった皆さんには意外と好評で、土井さんがもってきた餡子とともに日本の食べ物を体験していただける良い機会になりました。また、私たちは南半球にいることから、季節がちょうど冬になるため、日本人の二人はまるでお正月のような気分を味わう形になりました。

 

写真5 餅を持つ筆者(Alexandra Villa氏 撮影)

今回の船内レポートでは、JR号で先日行われたBBQについて紹介しました。JR号に乗船される方は、日本から何か食べ物を持っていくと喜んでもらえるかもしれませんよ。それでは次回もお楽しみに。

 

Exp. 393の航海レポート10:研究者を支える名脇役たち

桑野 太輔(千葉大学 大学院生)

みなさん、こんにちは。千葉大学D3の桑野太輔です。航海もついに最後の掘削地点(U1560)へとやってきました。今日から基盤岩の掘削が行われています。さて、JOIDES Resolution号(以下JR号)には、乗船研究者だけでなく、多くのテクニシャンやクルーの方が乗船されています。私たち研究者は、皆さんの支えがあるおかげでJR号の中で快適に研究・生活を送ることができているわけです。今回の記事では、その一部をご紹介させていただきます。

 

写真1 コアが上がってきた際に作業を行うテクニシャンの方々

テクニシャンの方は、主に乗船研究者のサポートをするとともに、コアがデッキに上がってきてからの作業を行います。テクニシャンの方にはそれぞれ専門があり、写真を撮影する方、薄片を作る方、サンプルの管理をする方、機器の管理をする方などがいらっしゃいます。彼らは、私たち乗船研究者の困りごとをサポートしてくださり、自身の仕事だけに集中できるような環境を作ってくださります。コアが上がってきた後に、コアキャッチャーから堆積物試料を取り出してくださるのもテクニシャンの方々で、私たち微古生物学者はボウルを持ってフロアに受け取りに行くだけです。このおかげで私たちは、すぐに自身の作業に取り掛かることができ、素早く年代を出すことができています。

 

写真2 コア写真を撮影するErick Bravoさん

 

写真3 薄片試料を作成するLuan Heywoodさん

また、船内の生活を支えてくださっているのがクルーの方々です。彼らは、全員分の食事、洗濯、部屋の清掃までを行ってくださっています。例えば、JR号では、洗濯物をネットに入れて部屋の前に置いておくことで、それをクルーの方が洗濯をしてくださり、その日中に洗濯された衣類が戻ってくるのです。また、生活編でも取り上げた食事ですが、約100名を超える乗員の食事を1日4回も作ってくださっています。こうした方々の支えもあり、私たち乗船研究者は研究だけに集中することができるのです。

 

写真4 生活を支えてくださるクルーの方々

さらに、ドリルフロアでは、私たちが必要な試料を得るために、多くのドリラーの方々が日々掘削を行ってくださっています。これらの作業は、暑い日も雨の日も絶え間なく行なわれており、私たちのために働いていただいていると思うと感謝の気持ちが溢れます。また、掘削中には船の位置を保持する必要があり、そうした船のオペレーションは航海士の方々が行ってくださっています。

 

写真5 ドリルフロアで作業を行う方々

今回のJR号での航海に限ったことではありませんが、こうした研究航海は、研究者のみではなく、多くの方の協力を得ることによって支えられています。もちろん、こうした航海を行うまでも、行った後も、ここでは紹介しきれなかった多くの方々が研究航海をサポートしてくださっています。こうした方々のためにも、今後の研究で立派な成果を出せるよう、日々研鑽していきたいと感じた次第です。

今回の船内レポートでは、JR号の研究・生活を支えてくださるさまざまな役職の方々について紹介しました。それでは次回もお楽しみに。

 

Exp. 393の特別レポート:Dick Kroon教授を追悼して

桑野 太輔(千葉大学 大学院生)

2022年5月24にご逝去されましたDick Kroon教授の追悼式が、2022年7月6日にJOIDES Resolution号で行われました。本式典には、IODP Exp. 393の乗船研究者である私と土井さんが、日本を代表して参列させていただきました。私自身は、Kroon教授とお会いしたことはありませんが、その功績は私たち学生でもよく知る偉大な方でした。

 

写真1 船上では弔旗が掲げられました。Erick Bravo氏(IODP/JRSO)撮影。

式では,本船のThomas Hartt船長より開式の辞が述べられ,本航海の共同主席研究者であるDamon A.H. Teagle教授からKroon教授を偲んで追悼の辞が捧げられました。さらに、本航海の乗船研究者であるMarcin Lates氏より”The Ship of Life” (John T Baker作) の詩が詠み上げられ、参列者全員で1分間の黙祷が捧げられました。

 

写真2 Dirk Kroon教授の名前が刻まれたファンネル

また、Dick Kroon教授の功績を讃えて,サイトU1583で使用するファンネルにその名前が刻まれました。このファンネルは、本サイトでドリルビットを交換する際に使用されるもので、2022年7月12日に海底へと旅立っていきました。

 

写真3 ファンネルが海底へ向かう様子

今回のIODP Exp. 393に乗船研究者として参加させていただきましたので、日本を代表し、ここに生前のご活躍に敬意を表し、ご冥福をお祈りいたします。

 

Exp. 393の航海レポート9:JOIDES Resolution号の階段

桑野 太輔(千葉大学 大学院生)

みなさん、こんにちは。千葉大学D3の桑野太輔です。船上での生活も後半戦に差し掛かり、段々と疲れが溜まってきました。さて、今回はタイトルにもあるようにJOIDES Resolution号(以下JR号)の階段について紹介したいと思います。

 

JR号の階段

とは言ってもただ船の階段を紹介するだけはありません。JR号のメインの階段にはこれまでに行われたDSDP、ODP、IODPのロゴが一面に貼られています。筆者が見た限り、最も古いものはDSDP Leg40のロゴマークでした。基本的にJR号で掘削が行われたものについては、全て貼ってあるそうです。DSDP、ODP時代のロゴマークは、モノクロで作られているのに対して、IODPになるとカラーが多くなっているところを見ると、時代の流れというものを感じます。

 

IODPになってからのロゴマーク
上の写真と比較してカラフルなロゴが多いことがわかる。

さて、このロゴは今回の航海でも作成されるわけですが、この航海の前半にあたるExp. 390でもロゴが作成されました。それが下の写真のロゴです。実はこのロゴは、Exp. 390に日本から参加した大学院生の高田真子さんが描いたものです。彼女のセンスには脱帽です。同じく日本から乗船していた相澤さんのお話によると「絵を描き始めると止まらなくなって,12時間の勤務後に頑張って描いていた」とのことでした。こうして日本人研究者が描いたロゴがJR号の中に残っていくというのは嬉しいものです。

 

前半の航海であるExp.390のロゴマーク

これらのロゴは、航海ごとに船内でロゴコンテストが行われ、見事にそれを勝ち抜いた研究者のロゴが採用されます。このように、ただの船内の階段ではありますが、DSDPからIODPまでに渡る掘削科学の歴史をロゴで振り返ることができます。

 

JR Pet Wallのコーナー

また、今回の航海では、「JR Pet Wall」と題して,乗船者の皆さんが飼っているペットの写真を、階段に貼りペットを紹介する企画が行われています。これは、アウトリーチオフィサーのTessaさんが企画してくださったもので、階段を利用する際に、犬や猫の写真を見ることで、私たちは癒されています。

 

JR号の階段に貼られた皆さんの願い事(土井さん撮影)

さらに、7月7日には、日本の夏のイベントである“七夕”を再現して、乗船者の皆さんに願い事を書いてもらうイベントが行われました。このイベントは、せっかく日本から乗船したので、世界の皆さんにも日本のイベントを楽しんでほしいと思い、筆者が企画したもので、多くの皆さんが短冊に願い事を書いてくださりました。何人かの方は、せっかくだから日本語で書きたいとのことで、日本語を書いてくださりました。また、このイベントでは、同時に日本から持参したお茶などを振る舞うことで、日本文化の紹介を少しだけ行いました。

このように、ただのJR号のメインの階段ではありますが、ロゴや写真、さらには願い事まで貼られており、通るたびに目を向けてしまうものになっています。今回はJR号の階段について紹介を行いました。また、次回の記事もお楽しみに。

 

Exp. 393の航海レポート8:JOIDES Resolution号での生活:娯楽編

桑野 太輔(千葉大学 大学院生)

みなさん、こんにちは。千葉大学D3の桑野太輔です。航海は半分を過ぎ、現在はU1583の堆積物の掘削が終わり、基盤岩の掘削に取り掛かろうとしています。このサイトは事前の航海(Exp. 390C、Exp. 395E)では掘削されていなかったため、微化石チームは、すぐにでも現在掘削中の地層の年代を出さねばと大忙しの日々でした。さて、今回の船上レポートでは、前回に引き続き、JOIDES Resolution号(以下JR号)での生活について、最終回となる娯楽編をお届けします。

 

JR号にあるジム

前回、船内生活の中の楽しみの1つとして食事を紹介しましたが、これ以外にもJR号には娯楽がいくつかあります。はじめに紹介するのが、ジムです。船内で2ヶ月間も生活をしていると確実に運動不足に陥ります。そこで、運動不足解消のためにあるのがジムです。ジムの中には、ランニングマシンから自転車、ダンベルなど、さまざまな器具が置いてあり、シフトの時間外で、皆さん運動をしているようです。筆者はジムには行かず、天気の良い時にヘリデッキを散歩することで運動したつもりになっています。

 

ヘリデッキから臨むJR号のやぐら

 

JR号にあるシアタールーム

また、その隣にはシアタールームがあり、まるで映画館のように大きなスクリーンで映画を楽しむことができます。JR号には約1000本のDVDも常備されているため、トランジットの間などの少し時間に余裕があるときには、研究者のみなさんが集まって映画鑑賞を行ったりしています。人によってはポップコーンやソフトドリンクを片手に見ている方もいて、ほぼ陸上の小さな映画館と同じ感覚でした。

 

JR号から見える夕焼け

さらに、夜シフトの皆さんは朝日を、昼シフトの皆さんは夕日を見に行くことが1つの娯楽になっています。今回の航海は、大西洋のほぼ中央で掘削を行っているため、周りに広がるのは水平線で、天気が良いと綺麗な朝日、夕日を見ることができます。筆者の場合は、昼シフトですので、夕方18:00過ぎになると、皆さんで船のデッキまで上がることが習慣となっていて、場合によっては外で夕日を見ながら夕食を食べたりしています。

 

アメリカ独立記念日を祝った特別なランチ
最後の方に写真を撮影したので、料理はあまり残っていませんでした。

また、これらの娯楽に加えて、船内ではさまざまなイベントも行われています。つい最近だと、7月4日にアメリカ独立記念日を祝って、特別なランチが企画されました。上の写真にあるように、食堂の中央部には飾り付けがなされ、海鮮料理からBBQまで多彩な料理が振る舞われました。このように忙しい船内での研究生活の中にも、小さな娯楽がたくさんあることによってシフト外の時間も楽しく過ごしています。

ここまでJR号の生活編についてお届けしてきましたが、いかがでしたでしょうか。次回の船上レポートでは、過去の掘削を振り返ることができるJR号の階段について紹介したいと思っております。それでは、次回もお楽しみに。

 

Exp. 393の航海レポート7:JOIDES Resolution号での生活:食事編

桑野 太輔(千葉大学 大学院生)

みなさん、こんにちは。千葉大学D3の桑野太輔です。JOIDES Resolution号(以下JR号)は、2番目の掘削地点であるU1558での作業を終え、次のサイトU1583に向かっています。このサイトでは堆積物を2ホール掘削することが計画されているので今までよりも忙しくなりそうです。さて、今回の船上レポートでは、前回に引き続きJR号での生活について、食事編をお届けします。

 

食堂に入ってすぐのドリンクバー

船上での生活の中で、楽しみの1つといえば食事です。食事は、朝、昼、夜、夜食の4回のタイミングで準備されていますが、そのうちの3回を食べることになります。筆者の場合、昼シフトですので、昼、夜、夜食の3回です。食堂に入るとまず、コーヒーやソフトドリンクなどが24時間いつでも取れるように用意されています。さらに奥へ進むと、本日のメニューが張り出されており、その中から食べたいメニューを選んでいくスタイルです。メインメニューに加えて、サイドメニューも追加することができるため、食べたいものを全て選んでしまうと大変な量になってしまいます。

 

ここでメインメニューを選んで、お皿に盛り付けてもらいます

さらに、これらに加えて、フルーツやチーズ、そしてケーキまでもが用意されています。ちなみにケーキとソフトクリームは、24時間自分の好きな時間に食べることができるため、食べすぎると間違いなくカロリーオーバーになってしまいます。

 

ショーケースに並ぶケーキ

実際にJR号の食事は、メニューが多彩で毎回いろいろな種類の料理を選ぶことができるので、あまり飽きることはありません。個人的には、グリルで焼いたステーキが好みで、先日の夕食では、ステーキを2枚も食べたため、周りの人からは大いに驚かれました。さらに、夕食では別にデザートがあることが多く、さまざまなバリエーションのデザートが毎日楽しめます。特に、溶岩ケーキは多くの方から人気があるメニューで、かなりの人が注文をしていました。船上では体重を測ることはできませんが、おかげさまで増量間違いなしです。

 

JR号での夕食。この日は、ラスク、フライドチキン、フライドポテト、ステーキ、サラダを食べました。

 

大人気デザートの溶岩ケーキを持つ筆者。外側はカリッとしているのに対して、中身は柔らかいチョコで構成されていて、アイスとの相性も抜群です。

さらに、これに加えて、食事の間にはクッキーブレイクの時間があります。研究者の皆さんはその時間になると、食堂でクッキーとコーヒーを片手にブレイクタイムの時間を過ごします。ですので、3時間に1回は何かを食べていることになるので、毎回お腹いっぱいに食べてしまうと、全然お腹が空かなくなります。

JR号の食事はいかがでしたでしょうか。次回の船上レポートでは、このシリーズ最終回となるJR号での生活:娯楽編をお届けしたいと思います。お楽しみに。

 

Exp. 393の航海レポート6:JOIDES Resolution号での生活:居住区編

桑野 太輔(千葉大学 大学院生)

みなさん、こんにちは。千葉大学D3の桑野太輔です。ここからの船上レポートでは、みなさんも気になるJOIDES Resolution号(以下JR号)での生活の一部をお伝えできればと思います。今回は居住区編です。今後乗船される方は、是非参考にしてください。

 

筆者が生活する居室

JR号の部屋は基本的に2人部屋で、中には2段ベッドと机が1台設置されています。2ヶ月も2人部屋なんて…と感じる方もいるかもしれませんが、心配する必要はありません。JR号は2ヶ月間の航海中、1分1秒も無駄にしないために24時間フルに稼働しています。そのため研究者は、12時間交代のシフト制で仕事をしています。具体的には0時から12時までがナイトシフト、12時から24時までがデイシフトになります。居室は基本的にシフトが異なる研究者が同じ部屋になるため、2人部屋ではありますが、シフト外の時間は基本的に1人で過ごせるのです! ですので、オフの時間は部屋でゆっくりと1人の時間を過ごすことができます。筆者は、寝る前にももいろクローバーZの曲を聞くことで、リラックスしています。

 

居室で本を読む土井さん
彼は暇なときに本を読んだりしているそうです。

ただし、忘れてはいけないのが、ここは船内の部屋であることです。JR号は比較的大きな船のため揺れない方ではありますが、移動中などは少し揺れが大きくなります。また、船ということもあり、引き出しなどにはすべてロックがかかっていて、揺れで引き出しが全て開くことがないように対策されています。同様に椅子もキャスターではないので転がる心配もありません。今回の航海では今のところ大きな揺れには遭遇していませんが、揺れが大きくなると机の上に置いてあるものが全て転がり落ちたりすることもあるそうです。ですので、パソコンなどの下には滑り止めマットが敷かれていたり、ロープで固定されていたりすることが大半です。

ベッドの下にある引き出し
取手の上にロックがあり、これを回さないと開かないようになっている。

次に、浴室を紹介します。JR号は部屋ごとではなく、2部屋の間にトイレとシャワーがあります。下の写真は私たち側の扉を開けて撮影していますが、扉が写っているのがわかりますね。つまり、浴室には両側に扉が付いていて、どちらの部屋からも入れるようになっています。そのため、浴室を利用する時はどちらの鍵も閉めておかないと、逆側から開けられてしまうなんてこともあるかもしれません。これらは船上の設備ではありますが、陸上で普段私たちが使用しているものと比べて遜色なく使用することができます。

 

JR号の浴室

最後に、今後乗船される方のために簡単に居室のポイントをお伝えします。JR号の船上の電源は115Vで、プラグはアメリカ仕様ですので、日本からの電化製品もそのまま変換なしで使用可能です。ですので、居室でPCやスマホを充電したり、持ち込んだドライヤーなどを使用したりすることができます。(ただし、一部の機器は、対象電圧を確認する必要があります。)また、アメニティは石鹸のみしか用意されていません。シャンプーやボディーソープが必要な方は持ってくると良いかと思います。歯ブラシ等も必須です。さらに、バスタオルは船内のものを使用することができますので、タオルは汗拭きタオルなどだけで十分です。上でも書いたように、シフト外の時間は部屋を中心に過ごすので、何か娯楽となるものを持ってくることをお勧めします。

JR号の居室はいかがでしたでしょうか。次回の船上レポートでは、JR号での生活:食事編をお届けしたいと思います。お楽しみに。

 

Exp. 393の航海レポート5:微古生物学者のお仕事

桑野 太輔(千葉大学 大学院生)

みなさん、こんにちは。千葉大学D3の桑野太輔です。JOIDES Resolution号は,次なる掘削地点U1558に到着し,堆積物の採取が始まりました。ということで、今回はタイトルにもあるように微古生物学者のお仕事について紹介したいと思います。

 

堆積物の ”Core on deck!”

私たち微古生物学者は、得られた堆積物から微小なプランクトンの化石である微化石を取り出して、それを船上で観察しています。これらは進化速度が速く、広く海洋に分布しており、さらに堆積物中から多産することなどから堆積物の年代を決定することができます。今回の航海では微古生物学者は3名乗船しており、石灰質ナノ化石と浮遊性有孔虫化石の観察を船上で行っています。そのうち石灰質ナノ化石は千葉大学から私と土井さんが、浮遊性有孔虫化石はUniversity College London (イギリス)からMarcin Latasさんが行っており、3人とも大学院生という超若手チームで頑張っています。

 

微化石チームでの記念写真(Tessa Lund Peixotoさん撮影)

私たちは、コアパイプの先端に取り付けられているコアキャッチャーの中に入った試料を使用して堆積物の年代決定を行っています。私たちは、”Core on deck!” のアナウンスとともに、コアキャッチャー試料を受け取りに行きます。これらの試料は、コアが上がってきてすぐに手渡されるため,私たちは堆積物を最初に観察することができるわけです。

 

コアキャッチャーから試料を取り出している様子

コアキャッチャー試料を受け取る土井さん

石灰質ナノ化石の場合は、使用する試料は耳かき1杯分にも満たないくらい量で、これをカバーガラスに塗布することでスミアスライドを作成し、偏光顕微鏡において観察を行います。顕微鏡観察では、年代指標となる化石種がいるかどうかを探すことで堆積物の年代を決めていきます。こうして得られた年代は船上のホワイトボードに書いていくことで、現在どのくらいの時代の堆積物を掘削しているのかがわかります。逆に、この情報を提供できるのは微古生物学者だけであることから、その仕事の重大さがわかると思います。

 

ある試料の石灰質ナノ化石の様子。(左)通常の写真、(右)偏向板を入れた状態の写真

今回のコア試料は浮遊性有孔虫化石と石灰質ナノ化石が豊富に含まれていたので、作業は忙しいですが、嬉しい結果になりました。ちなみに上の写真は、ある試料の石灰質ナノ化石を撮影したものです。大小さまざまな円盤状の分類群や星形の分類群が含まれていることがわかります。これらの種類や形は時代によって異なるので、私たちはそれらを見分けることで年代を決定しているのです。

今回は、微古生物学者のお仕事について紹介しましたが、次回からは船内での生活について紹介していきたいと思っています。それでは次回もお楽しみに。

 

Exp. 393の航海レポート4:ついに最初のコアを採取!

桑野 太輔(千葉大学 大学院生)

みなさん、こんにちは。千葉大学D3の桑野太輔です。約1週間の基盤岩の掘削を終え、JOIDES Resolution号(以下JR号)は,次の掘削地点に移動を開始しました。このサイト(U1559)では、前半の航海Exp. 390で堆積物までが得られていたので,基盤岩のみの掘削が行われ、コア試料が採取されました。

 

最初のCore on deck!

今回の航海では堆積物と基盤岩のどちらも掘削するため、さまざまな掘削システムを使用しているそうです。そこで、今回はJR号の3つのコアリングシステムについて簡単に紹介したいと思います。これらは略称でAPC、XCB、RCBと呼ばれています。APCはAdvanced Piston Corerの略で、柔らかい堆積物に対して油圧でパイプを突き刺すことにより、パイプの中に入った堆積物を回収します。海底面下すぐの堆積物は柔らかいため、堆積物のはじめはAPCで掘削が進められます。堆積物を掘り進めていくと、圧密によって次第に堆積物は固い地層へと変化していきます。そこで登場するシステムがXCBです。XCBはExtended Core Barrelの略で、ピストンコアリングが不能になった後の掘削で使用されます。これにより固い地層でもコア試料を採取することが可能となります。

しかし、上のシステムでは基盤岩を深くまで掘り進めることはできません。そこで登場するのがRCBです。RCBはRotary Core Barrelの略で、固い堆積岩や基盤岩に対して使用されます。このドリルビッドはXCBとは異なり、4つのローラーコーンがついた非常に頑丈なドリルビッドが使用されています。今週から行われていた基盤岩の掘削では、主にRCBのシステムを使用して基盤岩を掘削しました。下の写真の右側が実際に使用していたドリルビッドです。左の未使用のものと比較すると、かなり摩耗しており、掘削が非常に過酷な条件下で行われていることがわかります。

 

(左)未使用のドリルビットと(右)U1559掘削後のドリルビット

基盤岩を掘削している間、堆積物を取り扱う研究者たちは暇をしているのかと言うとそうではなく、トランジット中から作業は進められていました。実は、この航海の前半Exp. 390は本来であれば2020年の10月に実施される予定でしたが、新型コロナウイルス感染症の影響で、JR号に研究者を乗船させずテクニシャンの皆さんだけで堆積物の採取を先行して行っていました。そのときに採取したコア試料は未だ手付かずだったため、今回の航海では、それらの試料についても併せて記載・分析等を行っています。そのため、船内はどの分野も大忙しです。

 

上がってきたコアに集まる乗船研究者の皆さん

次回の船上レポートでは、私たち微古生物学者が船内で行っている活動を紹介したいと思います。お楽しみに。

顕微鏡観察を行う筆者

 

 

Exp. 393の航海レポート3: 約1週間のトランジットを経て

土井 信寛(千葉大学 大学院生)

皆さん、こんにちは。第一回で紹介して頂きました千葉大学で微古生物について専攻しています後期博士課程2年生の土井と申します。ケープタウンからJOIDES Resolution号が出航して約1週間が経過し、ついに最初の掘削地点に到着しました。初めての長期船上生活だったので、揺れる船内に体を慣らすのが大変で、波が荒れた時にはごはんを食べるのも苦労しました。ただ、掘削を始める前に船がなるべく動かないようにするので、しばらく揺れを気にする必要がなくなりそうです。日本では段々と暑くなっていく時期だと思いますが、こちらは南半球なのでこれから寒くなっていくことが予想され、既に船室外では肌寒く感じることが多いです。

船上の研究室から見える荒れた波模様

まだ到着したばかりの私たちは具体的な作業に取り掛かっていませんので、今回は参加しているExp 390/393で予定されている研究について、この回でご説明したいと思います。本計画は南大西洋横断調査(South Atlantic Transect)と題されていて、南大西洋を横断しつつ、合計6地点もの海底を掘削することになります。既に4月から行われていたExp 390で3箇所分の掘削は終わっているので、後半のExp 393では残りの3箇所に着手していく予定です。
実は今回の研究で対象にしているエリアでは過去に既に掘削が行われています。ですが、その研究航海は今から約50年前に行われたもので、研究の手法や技術などは現在と大きく異なっていました。それでもそのデータは過去の海洋環境の変化をきれいに表していたため、現在の海洋研究の根幹となる役割を果たしてきましたが、逆説的にこれを現在の技術で調べなおすことは関連研究に大幅なアップデートをもたらすことに繋がるのです。私たちのような微古生物を研究する者は本航海で目標としているものはまさにそれで、含まれている微化石群をもとに南大西洋の海底コアを調べ上げて、海洋環境変化を記録したスタンダードとする際に重要な役割を担います。また、きれいな状態でコアが残っていることがわかっていることから、個人的には微古生物の進化が海洋環境とどのように絡んでいたのかを明らかにするために本航海のコアが非常に有効であるのではないかと期待しています。
乗船している研究者の方々はこれからの海洋研究と自分の研究の発展のために熱意をもって本航海に参加しているので、この掘削地点への到着を非常に喜びます。今回は到着を祝って記念のケーキをみんなで食べました。いよいよ海底からの掘削が始まるので、近日中に桑野さんがその様子をお伝えしますので、次回をお楽しみにしてください。

 

船の到着をお祝いするパーティーでケーキを食べました

 

Exp. 393の航海レポート2: 揺れる船内

桑野 太輔(千葉大学 大学院生)

みなさん、こんにちは。千葉大学D3の桑野太輔です。現地時間の6/11にJOIDES Resolution号(以下JR号)はケープタウンを無事出港し、約1週間弱のトランジットが始まりました。ここからついに真のIODP Exp.393の始まりです。今回はタイトルにもあるように、実際にJR号が海に出てみて、どれくらい揺れるのかということについて紹介したいと思います。

 

出港時に港から臨むテーブルマウンテン

とはいうものの、どれくらい揺れているのかを陸上にいるみなさんにお伝えすることは非常に難しいことですよね。そんな中、JR号のラボに下の写真のようなものを見つけました。これは、船がどれくらい左右に揺れているかを簡易的に測定する装置です。上のピンクの部分が0〜5度、下の透明の部分は0〜15度までの目盛りになっており、写真の場合だと、3〜4度船体が右に傾いていることになります。ちなみに、今回は大西洋の中緯度の航海ですが、より高緯度の南極周辺に行くと、写真の下にあるように約15度傾くこともあるそうです。3〜4度と言うと、そこまで揺れていないように感じるかもしれませんが、身体にはそれなりに負荷がかかります。さらに、これに加えて、前後方向の揺れもあるため、時々身体が突き上げられるような感覚になることがあります。

 

船の傾き具合がわかる水準器

ちなみに筆者は船に非常に弱いため、案の定、今回も出港してすぐは船酔いでダウンしてしまいました。この記事も船酔いに耐えつつ執筆をしていますが、油断するとすぐに気持ち悪くなります。船酔いの程度は人によりますが、ほとんどの人が酔い止めを飲めば酔わないレベルでした。(船内で船酔いしていたのは私だけかもしれません。)JR号には、医務室も完備されており、そこでドクターが診察をしてくれます。筆者は早速、出港1日目からドクターにお世話になることになってしまいました。

 

JR号の医務室

研究活動の方は、今日から本格的にそれぞれのラボの準備が始まりました。微古生物学者が利用するラボについても、テクニシャンの方と一緒に、微化石を抽出する処理を行うために必要な物をセッティングしたり、顕微鏡のセットアップを行ったりしています。さらに、それぞれの使用方法や注意点などのレクチャーも受講したところです。微古生物学者の船内でのお仕事についても、このレポートで紹介できればと思っておりますので、お楽しみに。

 

Exp. 393の航海レポート1: ついにJOIDES Resolution号に乗船!

桑野 太輔(千葉大学 大学院生)

みなさん、こんにちは。IODP第393次研究航海 South Atlantic Transect 2に微古生物学者として参加している千葉大学D3の桑野太輔です。今日からの船上レポートではJOIDES Resolution号(以下JR号)で実際に行われている研究活動や皆さんの気になるところを随時投稿していきたいと思っておりますので、よろしくお願いします。

 

JR号と筆者

本航海には、日本からは2名が参加していますが、なんともう1名は千葉大学の同研究室から参加しているD2の土井信寛さんです。彼は、もともと第390次研究航海に陸上分析者として参加していましたが、第393次航海において微古生物者が1名乗船できなくなってしまったため、急遽本航海に参加することになりました。同研究室から微古生物学者が2名といった異例の組み合わせではありますが、各々の得意な時代があるのでコンビネーションはバッチリです。

 

宿泊していたホテルから臨むテーブルマウンテン

さて、私たちは先日5/31に東京を出発し、シンガポールを経由して、6/1に南アフリカのケープタウンへと降り立ちました。さらにそこから約1週間近く、港の近くのホテルで隔離期間を過ごしていました。ただ、ホテル隔離期間もZoomを用いたミーティングがほぼ毎日行われ、研究者間での交流も行われました。そしてついに、6/9にJR号へ乗船しました。これから数日間はケープタウンの港に留まり、その後、掘削サイトに向けてトランジットが始まります。

 

JR号のやぐら

私たちの活動や研究成果は、この船内レポートの他にもTwitter(JOIDES Resolution, IODP at Texas A&M,乗船研究者個人アカウント)やIODPホームページ(https://iodp.tamu.edu/scienceops/expeditions/south_atlantic_transect.html)などに掲載される予定ですので、ぜひご覧ください。

 

 

IODP 第390次航海 乗船前~出航前の様子

相澤正隆(琉球大学)
高田真子(東京大学)

●ホテル隔離
4月1日に東京を出発し,ドイツ・フランクフルトを経由して,4月2日に南アフリカ・ケープタウンに到着しました。船内での新型コロナウイルスの蔓延を防止するため,そのまま1週間のホテル隔離となりました。隔離期間中も頻繁にZoomミーティングがあり,乗船後のシフト発表もありました。
隔離期間中は,ホテルのスタッフとも極力接触しないようにする必要があったため,食事はホテルのルームサービスやUber Eatsの出前を利用しました。同じホテルに,乗組員,テクニカルスタッフ,研究者が総勢100名近く宿泊していたそうです。

 

写真1 ケープタウンのテーブルマウンテン

 

●乗船
ホテル隔離期間中に2回のPCR検査を受け,4月9日,ついにJOIDES Resolution号に乗船しました。数日間は港に停泊し,4月12日?に出航します。

 

写真2 JOIDES Resolutionの前で記念撮影

 

●ラボの様子
船内は,いくつかのラボがあります。5階には掘削されたコアがまず並べられて観察・記録を行うコアラボなどがあり,相澤(無機地球化学者),および高田(微生物/有機地球化学者)は,4階の地球化学ラボで主に作業をする予定です。
出航前なのでまだコアは掘られていませんが,既に測定の準備を開始しています。早くコアが上がってきて欲しい!

 

写真3-1 Geochemical Labでの準備の様子

 

写真3-2 Geochemical Labでの準備の様子

 

本航海の様子はJoides Resolution Science Operator(JRSO)のSNSでも発信中!
@TheJR (Twitter)
joides_resolution (Instagram)
@joidesresolution (Facebook)

航海概要

航海概要

テーマ

South Atlantic Transect

JRSOのページ>>こちら

航海予定期間

Exp. 390: 2020年10月5日~12月5日==> 2022年4月7日~6月7日
Exp. 393: 2021年4月6日~6月6日==> 2022年6月7日~8月7日

掘削船

JOIDES Resolution

乗船/下船地

Exp. 390: Cape Town, South Africa to Cape Town, South Africa
Exp. 393:Cape Town, South Africa to Cape Town, South Africa

掘削地点

南大西洋

 

科学目的

South Atlantic Transect Expeditions 390 and 393 (based on IODP Proposals 853-Full2 and 853-Add) are a multidisciplinary and joint scientific ocean drilling project that aims to recover complete sedimentary sections and ~200 m of oceanic crust along a crustal age transect at ~31°S across the South Atlantic Ocean to
(1) investigate the history of low-temperature hydrothermal interactions between the aging ocean crust and the evolving South Atlantic Ocean; (2) quantify past hydrothermal contributions to global geochemical cycles; (3) investigate sediment and basement-hosted microbial community variation with substrate composition and age in the low energy South Atlantic Gyre subseafloor biosphere; and (4) investigate the responses of Atlantic Ocean circulation patterns and the Earth’s climate system to rapid climate change, including elevated CO2 during the Cenozoic.

The South Atlantic Transect expeditions will target six primary sites on 7, 15, 31, 48, and 63 Ma ocean crust. The proposed transect, which follows a Mid-Atlantic Ridge crustal flow-line, will fill critical gaps in our sampling of intact in-situ ocean crust with regards to crustal age, spreading rate, and sediment thickness. The transect traverses the previously unexplored sediment- and basalt-hosted deep biosphere beneath the South Atlantic gyre, samples of which are essential to refine global biomass estimates and investigate microbial ecosystems’ responses to variable conditions in a low energy gyre and aging ocean crust. The transect is located near World Ocean Circulation Experiment (WOCE) line A10, providing access to records of carbonate chemistry and deep-water mass properties across the western South Atlantic through key Cenozoic intervals of elevated atmospheric CO2 and rapid climate change. Reconstruction of the history of the deep western boundary current and deep-water formation in the Atlantic basins will yield crucial data to test hypotheses regarding the role of evolving thermohaline circulation patterns in climate change, and the effects of tectonic gateways and climate on ocean acidification.

詳細についてはJRSOのページをご参照ください。

下記にCOVID-19に関する対応事項がございます:

COVID-19 Protocol: The JRSO has created a protocol to safely operate during the COVID-19 pandemic. If pandemic conditions have not improved by early-mid 2022, one or both expeditions may need to sail with a reduced shipboard contingent. However, all participants will maintain their designation as science party members regardless of whether they sail or not, and will have equal access to all expedition data and core materials. The protocol is available here: http://iodp.tamu.edu/scienceops/JR_COVID-Mitigation-Protocols.pdf

 

共同首席研究者

Exp. 390: Rosalind Coggon and Jason Sylvan
Exp. 393: Damon Teagle and Gail Christeson

 

事前科学説明会「Webinar」・資料 にアクセスいただけます

日時:2019年7月18日(木)12:00 pm Eastern Time(日本時間19日01:00 am JST)

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プレスリリース・報告書類

下記のようにプレスリリースされました:
https://www.jamstec.go.jp/j/about/press_release/20220406/

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