Exp. 339 Mediterranean Outflow
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- 乗船募集(終了)
テーマ
Environmental Significance of the Mediterranean Outflow Water and its Global Implications
(IODPでの大テーマ:Environmental Change, Processes and Effects)
プロポーザル#644-Full>>こちら
プロポーザル#763-APL>>こちら
Scientific Prospectus>>こちら
航海期間
2011年11月17日〜2012年1月17日
掘削船
JOIDES Resolution(USIO)
掘削エリア

航海概要
本航海は、カディス湾と西イベリアマージンの7つのサイトにおいてコンターライト堆積システム(contourite depositional system: CDS)のコアリングとロギングを行うことにより、地域的およびグローバルな海洋循環と気候における海洋ゲートウェイの重要性を明らかにします。
主な目的
- 中新世以降の地中海流出水(Mediterranean Outflow Water: MOW)の長期的変化および海水準変動によるMOWへの影響の復元。
- 北大西洋循環と地球規模の気候に対するジブラルタル海峡の役割の見積もり。
- CDSの構造と進化について、同時堆積ネオテクトニクスによる支配の解明。
また、本航海はAPLプロポーザル(763-APL)による掘削計画(1サイト)も含んでいます。この計画の概要は次の通りです。ポルトガルマージンと平行方向の表層および深層循環に関連して、更新世-完新世の1,000年単位での気候変化および変動の海域でのリファレンスセクションを作成します。このリファレンススセクションは、北東大西洋、極域氷床コア、およびヨーロッパの陸域に記録された急激な気候変動記録の時間的関連性に対し制約を与えることができます。
共同首席研究者
Francisco J. Hernandez-Molina & Dorrik Stow
J-DESCからの乗船研究者
| 氏名 | 所属 | 役職 | 乗船中の役割 |
| 黒田潤一郎 | 海洋研究開発機構 | 研究員 | Sedimentologist |
| 高清水康博 | 新潟大学 | 准教授 | Sedimentologist |
| 七山 太 | 産業技術総合研究所 | 主任研究員 | Sedimentologist |
| 西田尚央 | 産業技術総合研究所 | ポスドク研究員 | Sedimentologist |
| 風呂田郷史 | 北海道大学 | 大学院生(修士課程) | Sedimentologist |
Francisco J. Jimenez-Espejo |
海洋研究開発機構 | 外来研究員 | Physical Properties Specialist |
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IODP第339次研究航海 船上レポート〜イベリア半島沖東大西洋より〜
更新: 2012年1月19日
※更新の日付は日本時間
レポートインデックス
レポート10>>JOIDES Resolution からのライブ授業
レポート 9>>Cyclical and lineal time
レポート 8>>Happy New Year!!
レポート 7>>JOIDES ResolutionのCore Labを支える超ベテランテクニシャン
レポート 6>>Core description Labの今昔
レポート 5>>Exp. 339 あるあるシリーズ
レポート 4>>猫があるく(?)
レポート 3>>Thanksgiving day と Drill floor tour
レポート 2>>いざ出航
レポート 1>>出港前の船内
JOIDES Resolution からのライブ授業
西田尚央(産業技術総合研究所/Sedimentologist)
2ヶ月の航海も残りわずかとなり,船内は充実感や焦り,寂しさ,そして今後への期待と興奮が混ざり合った独特の雰囲気で満ちています.さて,今回のレポートではVideo conference についてご報告したいと思います.近年の IODP はアウトリーチ活動にたいへん力を入れています.Video conference もその一環で,インターネットによるテレビ電話(スカイプ)を使用して船と学校を結び,船のしくみや研究活動の様子をライブ映像によって直接紹介するとりくみです.今回の航海では,2ヶ月の間に合計 31 回実施され,7カ国(カナダ,日本,フランス,ポルトガル,スペイン,イギリス,アメリカ)のおよそ1,000 人の児童・生徒と200 人の大人(年齢では3−82 才)が参加しました.このうち日本の学校を対象に行われたのは合計4回で,参加した学校は次のとおりです.
(1)2011/12/21 八街市立実住小学校6年生 35人(担当:伊藤浩子 教頭)
(2)2011/12/27 長崎県立佐世保西高等学校2年生 4人(担当:田口康博 教諭)
(3)2012/1/12 群馬県立太田女子高等学校 38人(担当:金子 稔 教諭)
(4)2012/1/13 東京学芸大学附属小金井中学校1年生70 人(担当:栗田克弘 教諭)
基本的な流れはいずれも同様です:(1)はじめにデッキに出て掘削やぐら(Derrick)を見上げてから船内に入り,(2)コアカッター室に進みます.そして半割されたコアを紹介し,コアが処理されていく順にしたがって(3)物性解析(Physical property),(4)コア記載(Sedimentology),(5)古地磁気測定(Paleomagnetism),(6)微化石観察(Micropaleontology),(7)地球化学分析(Geochemistry)の各研究ラボをまわっていきます.(8)最後に,全体を通じての質問コーナーとなります.
今回のご報告では,学芸大附属小金井中の生徒を対象に行われた例をご紹介します.参加した生徒は希望者で,日本時間16:30(船内時間 7:30)から行われました.船側の担当は,筆者(同校卒業生)とアウトリーチ担当として乗船した He´lder Pereira さん(ポルトガルの高校理科教員)でした.相互通信が可能なことを活かし,各ポイントでは説明とともに,船側から生徒にいくつか問いかけしました.例えば,コア試料の泥質堆積物のおおよその堆積速度について聞き,その場で予想してもらいました.結果は多くの生徒のイメージと一致したものでしたが,実際の数字を聞いてその時間スケールの大きさを実感してもらえたと思います.また,英語が堪能な生徒2名が乗船中の外国研究者に直接インタビューすることもできました.全体を通じての質問コーナーでは,深海の泥を調べた結果をどのように活かせるのか,というシンプルかつ非常にクリティカルなことについてや,船での生活などについての質問がありました.1時間弱があっという間に経って,まとめの説明をして終了となりました.終了後,栗田先生から生徒の感想を伝えていただきました.それによると,JOIDES Resolution や深海掘削の研究に少なからず興味・関心を持ってもらえたことがよくわかるものばかりでした.
このライブ授業は,スカイプがインストールされたパソコン,ウェブカメラ,およびマイクがあればいいだけで,大がかりな準備は不要です.また,音声の伝達に多少のラグがあるものの,基本的には問題なくやりとりが行えます.映像は,船側の解像度を下げて学校側の解像度が良くなる設定としています.このため,学校側では映像をスクリーンに映しても比較的鮮明に見られたようです.
地質学や海洋地質学,あるいは古海洋学は,地球環境の将来予測していくために必要不可欠な学問分野です.一方,日本の学校教育では,これらに関連する学習が必ずしも十分ではないのが現状といえます.したがって,児童・生徒らに JOIDES Resolution でのナマの研究活動を伝えられるのは,たいへん意義のあることだと思います.今後も,積極的なアウトリーチ活動を継続していくことが重要だと感じました.
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写真1.船内の様子.ウェブカメラのついた PC を持つ He´lder さんと,Exp. 339 のロゴの入ったポロシャツを指さす筆者. 風呂田さん撮影. |
写真2.学芸大附属小金井中での様子.生徒たちが真剣にスクリーンに向かっている様子がわかります. 栗田先生提供. |
Cyclical and lineal time
Francisco J. Espejo(海洋研究開発機構/Physical Properties Specialist)
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We had recovered high amounts of sediment cores. The sediments are composed of sand and mud layers with either clear or diffuse boundaries. The relationship between the occurrence of the sand and mud layers is rhythmical over long periods showing a cyclical pattern. Few of my colleagues onboard have very deep interest in this kind of cyclical pattern. Understanding the onset and how and when these cycles change is, without a doubt, very relevant to every field of Earth Science.
In our daily lives cycles are very common. Every day we wake up and go to sleep following a planetary cycle called day and night, seasonal cycles control our holidays, and the Ise Shrine is rebuilt every 20 years*. One normal human lifetime enjoys 70 to 80 seasonal cycles. They are evidence of the cyclical character of time.
A few times sediment layers with different colors and special features appear. These layers are greener, enriched in biological remains, or harder than the normal layers. They represent the memory of unique phenomena that for some reason developed these characteristics. They are unique moments in geological history. We can find many unique events of different categories, a lineal succession where each event is quite unique.
I like events more than cycles. I don’t know why, but cycles are boring to me. I am onboard JR in order to study one of these unique events, a time when our planet Earth was warmer than at present. These lines remind me of something… a unique event that happened two weeks ago: my first child began to talk. He said: “TA-TA”**.
For somebody like me, these “events” are very important, and to lose one so big would be painful. Nevertheless, after core recovery, I understand that just now I am also living a unique event. Some of the best scientists of different countries are here working and living together, in a unique research environment. A few of them have been waiting for this moment for 30 years.
Maybe geology also can teach us how to manage our lives; maybe to concentrate on every moment that we are living because of it’s uniqueness, and to understand that we cannot enjoy all moments. This could be a good way to feel happiness. In any case, I like the lineal sense of time.
*伊勢神宮で行われる式年遷宮(せんぐう)。20年に一度行われるそうです。
**スペイン語で叔母さん
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Happy New Year!!
風呂田郷史(北海道大学/Sedimentologist)
あけましておめでとうございます!! 昨年は本当にたくさんの方々にお世話になりました。今年も何卒よろしくお願いします。と,新年の挨拶をジョイデスの船上からすることになったのですが、今日はジョイデスの上で迎えた正月の様子について書きたいと思います.
クリスマスの賑わいがわずかに残ったまま,ジョイデス・レゾリューション号は大西洋の上で新年を迎えました。ジョイデスに乗船して,はや1ヶ月半の月日が経ちました。このようなイベントを迎えると、改めて時間の経過する早さを実感します。乗船前は「まだまだ先」と思っていた正月がこんなに早くにやってくるとは・・・時間が経つのは本当に早い!!
日本より9時間遅れて2011年から2012年へ年が変わる頃,ジョイデスでは新年の通過儀礼が行われました。この通過儀礼は乗船者の最年長と最年少の2人によって,船の先頭に設置された鐘を鳴らすかたちで行われるのが通例だそうです。今回の最年長乗船者はテクニシャンの責任者であるロンさん、そして最年少乗船者は僕。聞き取れない英語もたくさんあるので不安もありましたが、このような儀礼に参加できる機会を得ることができて最高に嬉しかったです。
年が変わる5分ほど前に船の先頭へ行き,最年長のロンさんと握手をしました。「せっかくなら,コチーフのドリックさんから貰った,航海オリジナルポロシャツを着て儀礼に参加したい!」と思い,長袖のシャツの上からポロシャツを着て船の先頭へ向かいましたが、季節は冬、新年までの5分間は1人寒さと戦うことになってしまいました。震えながら新年を待つ中、たくさんのギャラリーが集まり、徐々に新年への時間が近づいていきました.
年が変わる10秒前,新年へのカウントダウンが始まりました.「3・・・2・・・1・・・0!」の掛け声に合わせ,最年長のロンさんが船に設置された鐘を8回鳴らしました.それに続き,僕が鐘を8回鳴らしました.8回目の鐘に合わせ拍手が起こり,乗船者同士の「Happy new year!」の挨拶が始まりました.新年の挨拶をしながら握手やハグをするのがこちらの挨拶のようでしたが,日本でハグなどしたことがないので,少し戸惑いながらも見よう見まねで挨拶をしました.乗船メンバーと握手やハグをする度に不思議と「この航海に参加できて良かった!」という気持ちがこみ上げてきたのでした.
儀礼の後は,朝までパーティを楽しみました.一時,船の一室がクラブのような雰囲気になり,皆で音楽に合わせ踊ったり,会話を楽しんだりした.お酒は禁止されているので飲むことはできませんが、それでも久しぶりに大騒ぎできたので、皆すごく楽しそうでした。僕も外国の研究者やコックたちと踊ったり騒いだりして、賑やかに新年を迎えることができました.パーティの後はいつも通り堆積コアの記載へ戻りましたが,久しぶりに大騒ぎできたこともあって、新年らしい清々しい気持ちで作業に取り組むことができました.
この航海も残すところあと2週間.悔いが残らないように最後まで全力で頑張り,全力で楽しんで終わりを迎えたいと考えています.本当はずっと乗っていたいところですが(笑)。
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| (写真1)新年の通過儀礼の一コマ。寒さのためか若干緊張気味な僕。右手(鐘の奥)は今年で70歳を迎えるロンさん。 | (写真2)ニューヨーク州立大学のFlood教授と私。全米屈指の深海堆積学の権威と日本の大学院生が差しでお話しできるのはIODPだからこそである。 |
JOIDES ResolutionのCore Labを支える超ベテランテクニシャン
七山 太(産業技術総合研究所地質情報研究部門/Sedimentologist)
Core description Labの仕事はアーカイブコア表面のスクリーピング、Digital Color Imaging 装置、SHIL (Section Half Image Logger)による高解像度コア写真撮影、SMISL (Section Half Multi sensor Logger)により彩度・明度と帯磁率(MS)の測定、そしてコアとスミアスライド観察と記載(VCD)が主な仕事である。今回の航海中も度々、SHIL、SMISL、 VCDをまとめるDESCLogikのシステムにトラブルがしばしば起こっている。しかし、船上の限られた資材でそれを修復する技術と知識を持つベテランテクニシャンであるTrevor Cobineさん、Dwight Hornbacherさん、Tim Blaisdellさん等が手分けして常時トラブルに対応しており、研究者としては大変心強い。本稿では、JODES Resolutionの誇るテクニシャンのうち、超ベテランの域に達した人物をご紹介したい。
Ron GroutさんはOperations Superintendentという要職につくテクニシャンである。一般にアメリカ人に年齢を聞くのはタブーとされるが、敢えてご本人に恐る恐る年齢を尋ねてみたところ、何と今年で70歳という驚くべき答えが返ってきた。ただし、残念な事に今回のExp 339が最後の深海掘削航海参加なのだそうである。他にも、Marine Lab SpecialistのTed Gustafsonさん、Marine Instrumentation Specialist のJurie Kotzeさんは若手に交じって連日元気に働いている姿を見かけるが、実際の年齢は存じ上げないが還暦を遥かに超えているようにしか私の目には見えない。
現在、日本でも国民年金の支給年齢引き上げに伴い、会社の雇用年齢を65歳まで引き上げる方向で国会でも審議が進んでいるし、今の国の財政状況を考えてもそれほど遠くない時期に現実化するのであろう。しかし人によって実年齢や体力・能力は異なり、日本人でも元気な人はRon Groutさんたちのように65歳を超えても12時間×2ヶ月間の激務を十分こなせる筈である。
ちなみに私の勤務する研究所の定年は現時点でも60歳のままであり、まだ十分に現役の研究者が勤まると思われる優秀な人材が年齢のみを理由に定年退職し、再雇用という名の非常勤職員のポストに追いやられている現実がある。しかも、ベテラン研究者の退職に伴い、研究所全体の技術力の低下や人材難を招いて問題化している。彼らJOIDES Resolutionの超ベテランテクニシャンの生き生きした姿をみていて、個人の能力や体力によって退職年齢を自ら決められるアメリカのシステムうらやましく思えるのは、おそらく私だけではないのであろう。
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| (写真1, 2)Operations Superintendentという要職につくRon Groutさん。一緒に食事をしていても、彼の周りに人が集まり、テクニシャンや研究者から広く慕われていることがよくわかる。 | |
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| (写真3, 4)Marine Lab SpecialistのTed Gustafsonさんも若手テクニシャンに混じって連日元気に働いている。アメリカという国の凄さを少し実感した。 | |
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| (写真5)Marine Instrumentation Specialist のJurie Kotzeさんも元気に活躍されている。 |
Core description Labの今昔
七山 太(産業技術総合研究所/Sedimentologist)
今回私はJOIDES Resolution改造後始めての乗船となったが、17年前に経験したSedimentologistの負担の偏在は現在も大して変わりはないようである。各航海において、Sedimentologistの仕事は12時間交代のシフト毎に4〜5名がインターナショナルチームを作って行う事が通例であり、言語や文化・教育の違いもあり意見調整が難航する事が多い。また、MicropaleontologistのSiteレポートはHole A のコアキャチャー試料のみでも十分に書けるが、Sedimentologistにおいては全てのHole Aを含めた全ての孔井の記載が課せられるため、他分野よりも厳しい労働条件となっている。これに加え船内システムのOA化が進み、逆にテクニシャンの数が減った事も関連していると私は推測する。本稿では我々Sedimentologistの主戦場であるCore description Lab付近の改変に関して覚え書きとして残しておくことにしたい。
第1図は私が始めてJR号に乗船した1994年 に撮影し地質ニュース505号にグラビアとして投稿したものを転用したものである。
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| (第1図)ODP Leg 155当時のCore description Labの風景。地質ニュース505号から転写した。 |
ODP Leg 155当時においては、Sedimentologistの仕事の手始めとして、まずテクニシャンが半割して記載用テーブルに置いたアーカイブコアの表面をスクリーパーで削り、子細にコア観察を行い(写真U)、手書きでVCDのフォルムを埋め、イラストレーターを使ってサイトごとの堆積柱状図をまとめる手順で作業を行っていた。彩度・明度の測定もアーカイブコアにラップを張ってMinolta CM-2002 Spectrometerを手作業で5cmごとにあてて計測していた(写真V)。さらに写真Vをよく見ると記載テーブル奥にPaleomagnetism Labとコア毎の写真をテクニシャンが撮る撮影台、左手にPhysical property Labがあったことが読み取れる。空間は 広々としていて5名のSedimentologistチームで作業をしていても 余裕があった。
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| (第2図)IODP Exp 306当時のCore description Labの風景。IODP Exp 306 photo galleryから転写した 。左手がPhysical property Lab,奥がPaleomagnetism Labであり、第1図との比較によりODP Leg 155当時と基本的な配置は変わっていないことが分かる。 | (第3図)IODP Exp 306当時のCore description Labの風景。Exp 306 photo galleryから転写した 。 |
第2図 は2004年にIODP Exp 306乗船時に撮影されたCore description Lab周辺の写真である。Core labの配置や記載テーブルは基本的にLeg 155当時のままであった。しかし、写真右手にはMinolta CM-2002 Spectrometerが固定化された AMSTと呼ばれる分光測色計が導入されていた。ただし、この機器はテクニシャンによる開発途上のためか航海中も頻繁に故障し、その度にコチーフの金松敏也氏が別の Spectrometerを用いて手動で計測していた事を記憶している。第3図もExp 306乗船時に撮影された写真であるが、テクニシャンが使用していたアーカイブコア撮影台は撤去され、代わりにGeotek X-Y imaging system (Geoscan II) と呼ばれるDigital Color Imaging 装置が導入されていた。ただし、当時この操作は SedimentologistではなくCore Labのテクニシャンがルーチンワークとして行っていたと記憶している。
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| (第4図)現在のCore description Labの風景。右手奥にはDigital Color Imaging 装置、SHILが新設されている。 | (第5図)現在のCore description Labの風景。テクニシャンが新たに開発したSMISL (Section Half Multi sensor Logger)が設置されている。 |
さて、JR号改造後のExp 339になってCore description LabはCore Lab全体の大規模改修に伴いドラステックに変化していた。私は直感的に与えられた空間が狭くなったことを感じとった。おそらくMicrobiology Lab新設のために既存の空間が縮小されたのであろう。Exp 306当時は フロアが異なり比較的自由なラボであったMicro Paleontology LabもPaleomagnetism Lab横のCore Labフロア(Core Deck)に移設されていた。Core description Labの記載用テーブルもアルミ製で高さが変動できるようにはなっていたが、以前と比べ安定感が薄れたような気がする。スケールもテーブルに設置されてはおらず、セロハンテープで張る形式に変わっていた。記載テーブルには、照明と一体化した大型拡大レンズおよびデータ入力用のパソコン、ディスプレイ、キーボードが設置され、コア観察を行いながらデータ入力が可能となっている。
加えてSHIL (Section Half Image Logger) と呼ばれるGeoscan II の後継機種であるDigital Color Imaging 装置とSMISL (Section Half Multi sensor Logger)と呼ばれる帯磁率と彩度・明度を同時に計測できる非破壊機器が新たに導入されていた 。後者から得られたデータはSedimentologistというよりもPhysical property specialistやStratigraphic Correlatorが使用することが多いようにも思える。
さらにCore description Labの他方の大きな変革はDESCLogicというVCD (Visual Core Description)やスミアスライド観察データをエクセル様のセルに入力することをコンセプトに開発されたVCD入力システムが導入されたことにある。このシステムはJOIDES Resolution船内のDBシステムであるLIMSを通じて他の研究分野のデータとリンクされており、船内の分析データが 一括管理しやすく他分野のデータにもすぐに対比可能な点が売りのようだ。DESCLogicの開発コンセプトとは、Sedmentologistが好んで書くような曖昧な手書き柱状図の表現から脱し、可能な限り簡略化した文章や記号として整理記録したいという意図なのであろう。ただし、我々のような長年手書きで堆積柱状図を作ってきた老年の研究者にとってはたいへん厄介な代物である。また、開発途中のためか入力作業中に バグが頻発しており、その度に システム管理対応のテクニシャンが応急対応に追われる状況である。おそらくこの作業は航海の最後まで続くことであろう。
今後のJ-DESCコアスクールでは、スミアスライド観察と同時にDESCLogic対策が緊急の課題となると私は考えている。ちなみに現在のシステムではSite柱状図はYeoperson が出版関連テクニシャンを兼務しDESCLogicで入力されたデータで柱状図の作成を分担しており、この点に限ってはSedimentologistの負担はやや軽減されていると見てよいのであろう。
12月12日
Exp.339あるあるシリーズ
西田尚央(産業技術総合研究所/Sedimentologist)
航海が始まって早くも1ヶ月近くになろうとしています.船内は,すでにあちらこちらでクリスマスの飾り付けが輝いています.今回のご報告では,これまでの船上生活でしばしば感じるちょっとしたこと,3点についてまとめたいと思います.
1.「Core on deck (floor)!」のアナウンス(苦笑)
掘削されたコア試料が回収されると,「Core on deck (floor)!」と威勢のいいアナウンスが船内に響きわたります.これまで観察経験のないコンターライトのコアに多少なりとも興奮しながら記載やその他の測定をしていると,このアナウンスによって次はどんなものが見られるのかと期待でいっぱいになります.ただし,当初は,の話です.というのも,今回の航海は,合計5,100 m ものコアを得る計画です.これらは主に比較的水深の浅いスロープ中部の堆積物を対象にしているため,一度回収が始まると次から次にコアラボに運び込まれます.それは時としていろいろな感想を持つヒマもないくらいのペースになります.そのような時に「Core on deck (floor)!」のアナウンスが響くと,「もうちょっと待ってくれ...」と思わず苦笑いしてしまいます.また,ワークシフトでないとき,特に,寝ている時にこのアナウンスが聞こえてしまうと,夢の中でもコア記載をすることになります(笑).もっとも,これも貴重な経験のうちの1つであることは確かです.
2.居室のバスルームの鍵(泣)
居室のバスルームを使用したい時に,中に誰も入っている気配がないにもかかわらず鍵がかかっていて困ることがあります.居室のバスルームは,隣り合うもう1つの部屋との間に位置し,共用になっています.つまり,双方の部屋から入るためのドアが2つあるわけです.このため,使用する時は隣室用の鍵をかけ,使用後はこれを開ける必要があります.もし鍵をかけたままにしておくと,隣室の人が使用できなくなってしまいます.これは,航海の初めに注意事項として説明もあったのですが,つい忘れてしまうことがあります.ただ,コインなどを使用して緊急用に外からでも鍵が開けられるので,大ごとになることはありません.とはいえ,使用したいときに鍵がかかっているととても焦ります.
3.バーベキュー(嬉)
毎週日曜,デッキでバーベキューがあります.当日は2時間くらい前から炭火焼きのいいにおいがコアラボにまでめぐってきて,シフトの終わりが待ち遠しくなります.バーベキューといってもコックさんたちが全て調理をしてくれているので,私たちはその中から好きなものを選ぶだけなのですが,青い空と一面の青い海に囲まれての食事は,とても気持ちがいいものです.これにビールがあるとさらに最高なのですが,ご存じのとおりドライシップ(禁酒)のため,コーラで楽しんでいます.毎週日曜に設定されているのは,「海軍カレー」のように,曜日感覚を作るためだと思います.日曜=バーベキューということで,また1週間がたったな,と再認識するわけです.ただし,このバーベキューは正午の食事に行われます.このため,0:00−12:00 のナイトシフトの人たち(筆者はこれに該当)にとっては夕食ですが,12:00−24:00 デイシフトの人たちにとっては朝食ということになります.デイシフトの高清水さんによると,「朝から肉はちょっと厳しい(苦笑)」とのことです.
今回のご報告は以上です.
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| 写真1.コンターライトのコアを楽しそうに記載する高清水さん. | 写真2.デッキでのバーベキュー.少しくらい寒くても関係ありません.この日は特大のハンバーガーにして食べました. |
11月28日
猫があるく(?)
高清水康博(新潟大学/Sedimentologist)
皆様、始めまして。新潟大学の高清水でございます。
25日の午前4時、JR号は、今回の航海で最初の掘削地点であり、もっとも水深の深いSite U1385に到着しました。私たちは、最初にあがってくる試料にそなえてここ数日間、綿密なシミュレーションとトレーニングを重ねてきています。今回日本から乗船した5人のうち4人はSedimentologistで、一人は、Physical Propertyを専門としており、全員Core Deckで働いています。
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| 写真1.モニターをみつめるR. Flood先生と私。卓上はスミアスライド観察用顕微鏡。 |
Staff ScientistのCarlosさんが、「もうすぐ試料の採取だよ(^^) ?(多分、和訳するとこんな感じ…)」と、教えてくれた後、私たちは、部屋のモニターに映し出されている深海カメラの様子をいまかいまかと見守りました。しばらくして、コアの先端が海底に突き刺さり、海底の泥が巻き上げられると、いよいよ試料の採取が始まりました。これから、何度となくこの作業を見ることになります。
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| 写真2.Cat walkって、こんなところです。 |
試料は、その後20分ほどで船上に上がってきます。最初のアナウンス「Core on floor !」が聞こえると、研究者はみんな、Cat walkと呼ばれるスペースに集まりました。そう、ここで最初のコアを各セクションに分割するのです。Cat walk?なかなか、愛嬌のある呼び方です。辞書で調べてみると、(高所にある)狭い通路、とのこと。最初のコアがやってきたときは、やはり、みんなで拍手をしたのでしたにゃぁ。
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| 写真3.First core ! やっと、着ました。初めて見るのでやっぱり、この瞬間は、嬉しいです。 | 写真4.First coreを待つ研究者たち。真ん中がCo-chiefのD. Stow先生。一番奥は、JAMSTECの黒田さん。 |
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| 写真5.Cat walkってこんなところ | 写真6.Cat walkのマーク |
11月25日
Thanksgiving day と Drill floor tour
風呂田郷史(北海道大学/Sedimentologist)
JR号に乗船し,早一週間が経過した.はじめて航海に参加した僕にとって船上での生活は,はじめての経験ばかりである.コアを撮影する機械などの操作はもちろん,JR号にはいろいろな国の研究者たちが乗っているため,異文化を楽しむこともできる.
11月24日,Midnightシフト(0:00〜12:00)の僕はお昼に,何も知らず夕食をとりに食堂へ向かった.普段は殺伐とした風景の食堂が,この日だけは鮮やかに彩られていた.スイカで作った大きな鳥のオブジェや,本の形をしたケーキが飾られていた.この日はThanksgiving dayと呼ばれる,日本でいう勤労感謝の日のような休日らしい.日本ではお祝いなどは特にしないが,アメリカではこの日からクリスマスの準備を始めるらしく,お祝いをする大切な日だとアメリカから来た研究者が言っていた.スタッフィンと呼ばれるパンを煮詰めたような食べ物を振る舞い,みんなでお腹いっぱいになるまで食事を楽しむのがアメリカのスタイル.JR号の船上でも,コックさん達が同じようにスタッフィンを作ってくれ,乗船メンバーはThanksgiving dayを楽しむことができた.まさに,コックさんにThanksgivingである.
昼食(僕にとっては夕食)を食べた後,ドリリングツアーに参加した.このツアーに参加すると普段は立ち入りが禁止されているムーンプール(海底にコアをおろしていく所)や,やぐらの真下へ行くことができる.ただしヘルメットや安全靴が必要になる.また,目の保護をするためのグラスも必要になる.フランス人の女性研究者はグラスのサイズが大きすぎて装着できていなかった.僕にはちょっと小さいぐらいなのに・・・羨ましい・・・.集合場所に集合した後,テクニシャンの案内でドリリングツアーを楽しませてもらった.実際,真下からみるやぐらの迫力はすごく,保管されているコアも間近で見ると12m以上あるように見えた.すごい迫力である.この道具たちの頑張り次第で,僕らが手に入れることのできるサンプルが変わってくる.ぜひとも頑張ってもらいたい!!
昨日までは船酔いに苦しめられていたが,さすがに慣れたのか今は非常に体が楽である.しかし,ドリリングツアーに参加したこともあり,今の時刻は16時.普段は夕方でも僕にとっては深夜の時間帯.明日のシフトは深夜から始まるので,早く寝ないと体がもたない.船に乗るまでにお世話になった人たちや,今お世話になっている人たちにThanksgivingして,明日からまた頑張ります!!
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| 写真1.Thanksgiving dayの食堂の様子.鮮やかな食事が飾られている. | 写真2.コックたちが作ってくれたスタッフィン.見た目とは別に美味しい. |
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| 写真3.真下からみたやぐらの様子.近くから見るとさらに大きく見える. |
11月22日
いざ出港
黒田潤一郎(海洋研究開発機構/ Sedimentologist)
みなさま、こんにちは。海洋研究開発機構の黒田潤一郎です。
JOIDES Resolution 号は、現地時間11/22(火)午前7:30、日本時間の同日午後5時半にポンタ・デルガダ港を出港しました。北大西洋を東進してイベリア沖に向かいます。これからの約2カ月間、イベリア沖の7サイトで海底堆積物の掘削をおこないます。
本航海には日本から6名の研究者が乗船しています。他にも、アメリカ、イギリス、スペイン、ポルトガルなど計12カ国から参加した研究者が乗船しています。私は船上で岩相の記載を行うSedimentologistとして乗船します。
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| 写真1. 日本からの6名の乗船研究者。これから苦楽を共にします。ポンタ・デルガダにて。 |
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| 写真2. ブリッジから出港のようすを眺める乗船研究者。12カ国から研究者が参加しています。怒涛の2カ月間の始まりです。 |
本航海では、ジブラルタル海峡を通って地中海から北大西洋に流れ出る高塩分の海水「地中海流出水」の流出経路にたまっている堆積物を回収します。地中海流出水の流出量や流路の変動は北大西洋の海洋循環に影響を与え、さらにはグローバル気候変動に影響を与えていると考えられています。海底堆積物から地中海流出水の発達史を明らかにし、大西洋海洋循環への影響を評価します。
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| 写真3,4. さようなら、アゾレス。さようなら、陸地。 朝日に向かって北大西洋を東進します。 | |
航海の日々のようすを、日本からの乗船研究者がお伝えしていきます。楽しい船上生活と楽しいサイエンスを。とくに、本航海はクリスマスや年越しなどイベントが目白押しです。果たしてどんな航海になることか?お楽しみに!
11月18日
出港前の船内
七山 太(産業技術総合研究所/Sedimentologist)
11月16日(水),私は新潟大の高清水康博さん,JAMSTECの黒田潤一郎さん,産総研PDの西田尚央さん,北大院の風呂田郷史さんと成田空港で集合し,アムステルダム,リスボン経由で,17日夜に,日本の地球の裏側に位置するアゾレス諸島のポンタデルガーダ空港に降り立った.この間に要した航空機による移動時間は約15時間であった.
18日昼,ホテルから,ポンタデルガーダ港に寄港中のR/V Joides Resolution号(以下,JR)に乗船研究者全員で移動した(写真1).JAMSTECのFrancisco Jimenez-Espejoさんは別途スペインを経由し,夕方JR船上で私たちと合流した(写真2).
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| 写真1.ポンタデルガーダのホテルから見た港に停泊中のR/V JOIDES Resolution号. | 写真2.J-DESCから派遣された元気な5名の若手研究者たち.航海中の活躍が期待できそうである. |
私にとっては2005年Exp 306 North Atlantic Climate 2掘削航海以来の3度目のJR乗船であり,過去2回の航海での知人との再会の場ともなった.特に今回我々sedimentologistチームをとりまとめるニューヨーク州立大のRoger Flood教授は私が九大の学振PD時代に初めて参加した1995年のODP Leg 155 Amazon Fan掘削航海でコチーフを務められた米国IODPの大御所であるが,彼の年齢は優に還暦を超えている筈である(写真3).
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| 写真3.コアラボでのcore descriptionの打ち合わせ.左はRoger Flood教授. |
Exp 339航海のコチーフであり644-Full2のプロポーネントの一人でもあるDorrik Stow教授は著名なイギリスの海洋地質学者かつsedimentologistであり,その昔筑波大学在籍時の小川勇二郎教授のところに在外研究者として滞在されたこともあるそうで,私にとっては今回が初対面となった.一見物静かな英国紳士ではあるが,その反面芸術家のような独特のオーラを漂わせる方でもあった.この方も還暦を超えている計算になる.
ところで, 18〜19日は地元アゾレスの学生や大人を対象とした数百人規模の船内見学会が行われており,USIOやNSFのスタッフはその対応に慌ただしく追われているようであった.今回の乗船研究者であるGary ActonやAntje Voelkerもボランティアとして案内者を務めていた(写真4).
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| 写真4.アゾレスの地元の高校生にコアを使ってK-T境界を解説するGary Acton. |
我々は乗船後,早々自由時間となり,私物の片付け後,改造後のJR船内を初めて見る機会を得た.全体としては,やや広く明るく清潔になった印象である.居室も2名対応になっており,船が揺れるときしむスチールロッカーも新装されていた.一方ラボスペースの方では,全体の図書室が無くなり,図書は各ラボスペースの棚に分散されていた.これは,利便性よりもスペースを優先した結果と私は想像するが,逆に図書の検索は困難になった気がする.
Exp 339航海は年末年始に渡って行われるクリスマス航海となるが,早,気持ちはクリスマスイブや新年を超えて今回のメインターゲットであるcontourite drift堆積物掘削への対応に腐心する雰囲気が船内に漂っているように私には思えた.
このメディアリリースは日本時間1月18日 20時に発表されました。
原文(英語)はこちらでダウンロード可能です。
イベリア半島沖、海底を流れる川の砂と泥の中に見た過去600万年間の地球の歴史
世界中から集まった科学者を乗せた掘削船JOIDES Resolution号が2ヶ月間にわたる研究航海を終え、リスボンに帰港した。かつて掘削されたことのない海域で、総延長5キロメートルに達する海底コア試料の回収に成功。今回の航海で採取された海底コアから、研究チームは過去の詳細な気候変動の記録や、地球深部の変動に関する証拠を得た。さらに、今後の石油や天然ガスの探査に役立つ重要な知見を得た。
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2012年1月18日、ポルトガル・リスボン
世界中の海は、静かな状態から大きくかけ離れた状態にある。海の中にはさまざまな水の流れがあり、絶えずダイナミックに動いている。海の中の流れはやがて合流してグローバルなベルトコンベヤーとなり、地球の熱輸送機関となって気候を安定に保つ役割を果たしている。いくつかの海峡(ゲートウェイ)は、海洋循環に大きな影響を与える。ジブラルタル海峡はそのようなゲートウェイの一つであり、約600万年前に大西洋から孤立した地中海が、再び開いた時から現在まで、絶えず大西洋と地中海の海水の交換が営まれている
訳注:ジブラルタル海峡が開いたのは530万年前と考えられている。それ以前の600〜530万年前には地中海は大西洋から孤立し、蒸発が進んだと考えられており、その事変はメッシニア塩分危機(Messinian Salinity Crisis)と呼ばれている。さらにそれより古い600万年前以前は、大西洋と地中海をつなぐゲートウェイは別の場所に存在したと考えられている。
今日では、ジブラルタル海峡の海中深くで、地中海の水が滝のように流れ出ている。この水は大西洋の海水よりも高塩分で重いため、海底斜面を水深1000メートル以上を一気に流れ落ち、海底を削って深海の海底谷をつくる。削られた海底では岩盤がむき出しになり、別の部分では泥の山ができる。しかしながら、この流れが作る特殊な海底地形は今のところ詳しくはわかっていない。そしてこの海底の山を作る泥や砂は、地中海流出水ができた530万年前から現在までの気候変動や地殻変動に関する情報を記録している。
昨年11月から8週間にわたり、掘削船JOIDES Resolution 号で地中海流出水によってたまった泥や砂(コンターライト)の掘削回収がおこなわれた。航海には日本を含む14カ国から35名の科学者が参加した。コンターライトとは、海中で等深線(コンター)に沿うように流れる底層流が運んできた砂や泥の堆積物を指す。イベリア半島の南西沖やカディス湾は、地中海流出水による底層流が1000 m付近のコンターに沿って流れている。ここはコンターライトの研究に最適な場所と考えられてきたものの、これまで堆積物の掘削が一度も行われていない。今回行われた統合国際深海掘削計画第339次航海:地中海流出水(Integrated Ocean Drilling Program: IODP Expedition 339: Mediterranean Outflow)は、この場所で海底下深くから堆積物コア試料を回収する初めての試みであった。今回の研究航海の共同首席研究者を務めたDorrik Stow 教授(英国Heriot-Watt 大学)は、「コンターライトの特徴を明らかにすることができ、コンターライトの堆積作用に関するこれまでのパラダイムを疑いの余地なきものにすることができた」と語る。「今回の航海は、私たちの疑問に多くの答えを与えてくれた。その多くは予想通りのものであったが、同時にまったく予期せぬ発見もあった」
研究チームは、地球深部の地殻変動の鼓動「テクトニック・パルス」の証拠を発見した。ここはヨーロッパプレートとアフリカプレートのつなぎ目にあたり、これまで地殻構造の上下動がゲートウェイの周辺で繰り返し起こってきた場所である。このような地殻変動は、ときに巨大地震や津波を発生させ、それによってできた大規模な流れは大量の土砂を深海に運ぶ。また、7か所の掘削サイトのうち4か所では地質記録の欠損が見られた。これは砂や泥が海底にたまらない時期が長く続いたことを意味する。つまり、過去のある時期に地中海流出水が強まって海底が削られたのだ。
もう一人の共同首席研究者であるJavier Henandez-Molina博士(スペイン Vigo University)は「過去600万年の間、ジブラルタル海峡が地中海と大西洋とを遮る堤防、あるいは両者をつなぐゲートウェイとしてどのように機能してきたのか、その解明が始まった」と語る。「私たちは、ジブラルタル海峡から深海に流れ出る地中海流出水の強い流れの記録を手に入れたのだ。
最初の掘削サイトは、ポルトガルの西方沖であった。このサイトは、過去150万年間の地球環境の変動を知るための連続海底コアを得る目的で選ばれた。このサイトのコアは少なくとも4回の主要な氷河期の堆積物を含んでおり、グリーンランドや南極の氷床コアから得られる気候変動の記録や、他の陸上・海洋記録と比較するための重要なコアとなるだろう。
訳注:最初のサイトで回収された泥はコンターライトではなく、遠洋性の泥。
研究者を驚かせたのは、最初の掘削サイトで見いだされたものと同じような記録がカディス湾で掘削回収されたコンターライトの泥の中にも見出されたことである。カディス湾の泥はイベリア西方沖に比べて数倍の速さで堆積しているため、さらに時間解像度の高い気候変動記録を保持しているかもしれない。
Henandez-Molinaはさらにこう解説する「コンターライトは気候変動という暗号の解読にはいくぶん不向きであると考えられてきた。というのも、コンターライトにはさまざまな供給源から運ばれた泥や砂が含まれているため、気候変動の記録だけを取り出すことが難しいからである。しかし、コンターライトの泥の変化が意味するものは、さらに意義深いものかもしれないことが今回の研究航海で分かってきた。気候変動と海洋の変動は密接に関連している。コンターライトの泥の中に、気候と海洋のリンクに関わる記録が残されているように思える。
もう一つ研究者を驚かせたことは、コンターライト堆積物の中に予想をはるかに超える厚さの砂が見つかったことである。この砂は底層流の通り道にできた溝(チャネル)を埋め、海底の泥の山の中に厚く存在し、あるものはジブラルタル海峡から100キロメートル近く離れた場所に広く砂を運んでいたのである。このことは、とりもなおさず地中海流出水がつくる底層流が強く速い流れであった時期が長きにわたって続いたことを示している。さらには、この発見は将来の石油・天然ガスの採掘に大きなインパクトを与えるだろう。
Stow はさらにこう続ける「こういった砂の物性、層厚、分布を調べることで、この砂が深く埋没した際に炭化水素の貯留岩になるかどうかを評価することができるだろう」。一般的に、斜面を流れ落ちる混濁流によってたまった砂が石油や天然ガスの貯留岩の役割を果たしている。これに対して、コンターライトの砂は、底層流が作るチャネルや段丘部に全く異なるメカニズムで堆積している。「コンターライトの砂は、粒の大きさが揃っている(淘汰が良い)。このため空隙が多く透水性が高いため、より質の高い貯留岩になり得る。私たちの発見は、今後の石油・ガス探査の新しいターゲットになる可能性を秘めている」
追加募集情報
乗船者募集〆切
2011年6月20日(月)
終了
募集人数
1名
募集分野(優先される順)
1) Organic Geochemist (experienced)
2) Diatom paleontologist (experienced)
3) Physical Properties/Petrophysics
応募する>>こちら
その他・注意事項
乗船旅費について>>こちら(乗船が決まった方は様式に記入の上お送りください)
乗船研究者のためのガイドライン>>こちら
※応募する方は全員英文CV、さらに在学中の場合は指導教員の推薦書が必要となります。
※修士課程の大学院生の場合は乗船中の指導者(指導教員もしくは代理となる者)が必要です。
お問い合わせ
J-DESC事務局
E-mail: infoの後に@j-desc.org
Tel: 045-778-5271
CALL FOR APPLICATIONS
The Integrated Ocean Drilling Program is accepting applications for scientific participation on the Mediterranean Outflow drilling expedition of the JOIDES Resolution in the eastern North Atlantic Ocean.
Mediterranean Outflow Expedition (20 November 2011 - 20 January 2012):
This expedition (based on IODP Proposal 644-Full) will address the importance of ocean gateways in regional and global ocean circulation and climate by coring and logging seven sites on the contourite depositional system (CDS) in the Gulf of Cadiz and the West Iberian Margin. The primary objectives are (1) to reconstruct the long-term variability of Mediterranean Outflow Water (MOW) and impact of sea level change on MOW since the Miocene, (2) to evaluate the role of the Gibraltar Gateway on North Atlantic Ocean circulation and global climate, and (3) to document syn-sedimentary neotectonic controls on architecture and evolution of the CDS.
This expedition will also address the scientific objectives of IODP Proposal 763-APL that aims to produce a marine reference section of Plio-Pleistocene millennial-scale climate variability and changes in surface and deep-water circulation along the Portuguese Margin. Records from this reference section will constrain the temporal relationships of abrupt climate change recorded in the northeast Atlantic Ocean, the polar ice cores, and European terrestrial records.
The current expedition schedule is available at http://iodp.tamu.edu/scienceops/. The schedule provides links to the individual expedition pages, including planning information and the original IODP proposals 644-Full and 763-APL.
APPLICATION DEADLINE: 3 January 2011: Scientists interested in participating must apply to the appropriate IODP Program Member Office (http://www.iodp.org/program-member-offices) by 3 January 2011.
Applications of nominated scientists will be forwarded from the IODP Program Member Offices to the United States Implementing Organization (USIO). The USIO will work with the expedition chief scientists and IODP Program Member Offices to maximize the scientific impact and balance scientific participation by IODP members.










































